?キャスタニックの男たち
「よお姉ちゃん!
俺らと遊ぼうぜー!」
?市民G
「えっ……」
?キャスタニックの男たち
「なぁ、いいだろー?
な?こっちこいよ」
?市民G
「あの、やめて……くだ…」
?キャスタニックの男たち
「やっべチョーかわいいじゃん!」
?市民H
「……悪魔が…
………忌まわしい……」
ロミナの母親
「……あの子かわいそうに…」
?市民I
「…悪魔なんか来るべき所ではないわ
出て行ってくれないかしら……」
ロミナ・グレングリーン
「ママーたすけてあげようよ!」
ロミナの母親
「だめよ!
悪魔と関わったら
私たちまで混沌に支配されてしまうわ」
ロミナ・グレングリーン
「でも………」
?高貴なる声
「そこの悪魔!
即刻その穢れた手を離しなさい!」
ロミナ・グレングリーン
「あっニミュエ様!」
ロミナの母親
「ニミュエ様!」
?キャスタニックの男たち
「アァン?上等じゃ」
?キャスタニックの男たち
「うぉっ!?すっげ美人!!」
?キャスタニックの男たち
「俺この子がいいわー!
な?俺と遊ぼうぜ!
な?
悪いようにしねーからさ…」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
スッ
スッ
ササッ
バッ
長老ニミュエ・ローヘン
「混沌にして悪魔である
穢らわしきキャスタニックが
この聖都の穢れなき婦女子を
愚かにも誘いあげ
それだけでも千鞭相当!
そして事もあろうに
この長老ニミュエに対しても
同様の狼藉とは言語道断!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「穢れ堕ちた悪魔に
ふさわしき聖鎚を!!
覚悟なさい!!」
?キャスタニックの男たち
「へ?長老?
俺別に
そんなの気にしないぜー?
…ってか
御託はいいからこいよ」
ガッ
長老ニミュエ・ローヘン
「………触れるな下郎!!」
マジックミサイル!!
ぐっぎゃあああああっ!?
かっこいい……
長老ニミュエ様のようになりたいな……
スッ
スッ
ササッ
バッ
ロミナ・グレングリーン
「この聖都にてなんたる狼藉!
このロミナ・グレングリーンが
あなた方の不埒な悪行
即刻ここに正してさしあげますわ!」
ロミナの父親
「……ロミナ?
何やってんだ?」
ロミナ・グレングリーン
「パッ、パパッ!?
ノックぐらいしてよ!!」
ロミナの母親
「ふふ……
ニミュエ様のマネしてるのよ。」
ロミナ・グレングリーン
「ママ!ちょっとー!」
ロミナの父親
「はは、
それなら仕方ないなー」
ロミナ・グレングリーン
「すっごい綺麗!
ねえママ!
これってどこなの?」
ロミナの母親
「ここはポラ・エリーヌね。
太古よりハイエルフと縁深い
エリーンの故郷とされる地よ。」
ロミナ・グレングリーン
「そうなんだ……」
ロミナの母親
「………いずれあなたも
このポラ・エリーヌの記憶を刻み
未来へ継ぐ語り部の
片鱗と成さねばなりません。
……ま、そのうち、ね。」
ロミナ・グレングリーン
「ふーん?」
ロミナの母親
「ねえ、ロミナ?
もし興味あるなら
魔法アカデミーに行ってみたら?
いろんな景色の写真、
たっくさん見れるわよ?」
ロミナ・グレングリーン
「そうなんだ!行って来るー」
ロミナ・グレングリーン
(わあ…
こんなに綺麗な写真がいっぱい……)
ロミナ・グレングリーン
(………ヴェリカの歴史は
ヒューマンの歴史……
女神ヴェリックの庇護を受け
千年ほどの年月で
小さな村落から
アルボレア最大の
交易都市へと発展………)
ロミナ・グレングリーン
(………ヒューマンって
本当は凄い種族なんだ……
好き勝手やってる
野蛮な種族だと思ってた…)
ロミナ・グレングリーン
(……あれ?これって…………)
ロミナ・グレングリーン
(……春風草っていうんだ…
…すごいきれい………)
ロミナ・グレングリーン
「ねえママー!
魔法アカデミーってすっごいね!」
ロミナの母
「そうでしょう?
ママも子供の頃はよく通ってたわ」
ロミナ・グレングリーン
「そうなんだ!」
ロミナ・グレングリーン
(あれ?
あれはニミュエ様……
またキャスタニックが
悪いことしたのかなー)
長老ニミュエ・ローヘン
「そこのキャスタニック!
…今、何か拾いましたね?」
?キャスタニック市民A
「え、いやそんなことは………」
長老ニミュエ・ローヘン
「このアルレマンシアにて
あなたのような悪魔を
住まわせてあげている事自体が
既に生涯かけても得られぬ
途方なき恩寵だというのに
あろう事か落し物を物色するなどと
笑止千万!!
恩を仇で返すおつもりですか!?」
?キャスタニック市民A
「いえ!違います!これはただ」
長老ニミュエ・ローヘン
「言い訳など見苦しい!
この期に及んで実にみっともない…
恥を知りなさい!
……あなたは明日から追放です。
今すぐ荷物をまとめ準備なさい。」
?キャスタニック市民A
「ええっ!?
子供もいるのに
そんな急に放り出されては………」
長老ニミュエ・ローヘン
「無論、共に立つ事を許可します。
悪魔の子供など
一人置かれても迷惑極まりない。
あなたはそれだけの
罪を犯したのですよ。」
?キャスタニック市民A
「そんな………
ニミュエ様っ!
せめて数週間の猶予を
くださいませんか!?
子供もまだ赤子といって
いいほどなんです!」
長老ニミュエ・ローヘン
「話は終わりです。
明日、迎えにあがりますので。」
?キャスタニック市民A
「ニミュエ様ぁっ!どうか!」
ガッ
長老ニミュエ・ローヘン
「………触れるな下郎!!」
パシィンッ
?キャスタニック市民A
「……ニミュエ、様………?
そんなに………」
そんなに私達のことが
お嫌いなのですか……?
あれ………?
悪魔のはずなのに………
…よくわからないけど
何か、違うような気がする……
ロミナの母親
「………あら?
それは春風草の写真……」
ロミナ・グレングリーン
「すっごい綺麗な花だよね!」
ロミナの母親
「………ふふっ」
ロミナ・グレングリーン
「何よ急に笑い出して……」
ロミナの母親
「あなたももう年頃ですものね。
……そろそろ
お話してもいいかもしれないわね…」
ロミナの母親
「春風草の伝承を。」
ロミナ・グレングリーン
「春風草の…伝承?」
ロミナの母親
「ハイエルフは、
古代エルフの後継種という事は
知っているわね?」
ロミナ・グレングリーン
「うん、知ってるけど……」
まだ戦乱の時代で、
アルレマンシアもまだ
雛形すら形成されていない
古代の話になります。
エルフ族は、
ハイエルフ同様に美しく
聡明な種族であり、
現在では失われつつある
見えざる者を認識し
その意を交わす力を
身につけていました。
現在では
長老様や総司令官様、
ディバインエルフ様が
その力を継承しているようです。
その力を欲する者らにとって
その能力は戦争に利用価値があるとし
エルフたちは度々襲撃されました。
それがゆえ、
森の奥深く、秘境ともいえる地に
身を潜めひっそりと暮らすようになった
ともいわれていますね。
それらエルフ族にとって
想い人と契りを交わし
その寿命尽きるまで過ごしゆく事は
多くのエルフの悲願だったのです。
古代エルフの寿命は
私たち平民のおよそ5倍。
悠に千年ほどです。
……悠久の時を生きるエルフ族、
しかも戦乱の時代、
いつ死ぬかもわからぬ時代背景。
…その天寿まっとうするその時まで
最愛の相手と穏やかに過ごし
看取られ暖かな死を迎える事。
…それがどれだけ幸福な事か。
当時、一つの村落が
二つの村落へと分かたれました。
双方の村落の村長は
お互いに将来を
誓い合った仲でしたが
襲撃により
離郷を余儀なくされたのです。
別れの際、
再会を固く誓った二人は
戦力を分かち、
離れ離れになったのでした。
それから長い年月が経ちましたが
平穏な時代は未だ来ず、
村長としての責務もあり
再会叶わずにいました。
その男村長の方は、
女村長と交わした約束を
幾年も気がかりに
それは村人も気がかりに…
そんなある時、
周辺に不穏な空気を感じます。
天候を読み、
見えざる者と交信するエルフは
度々、危機を回避し
住居を転々と移し、
時に外敵を撃退してきましたが
ついに追い詰められてしまいます。
男村長は皆を引き連れ
どうにか退避しようとしますが
村人の意は違いました。
女村長と交わした約束、
今こそ果たしてきてください、と。
しかしそれでも村の為を思えば
一人抜け出す事などできはしません。
そこで村人の一人が
村長に決闘を申し込みます
エルフ族には古来より
決闘に勝利し支配者級の地位に
成り代われる制度がありました。
無論、命を賭け
敗北した者は世を去ります…
現代においても
その制度は失われていません。
ただし、その決闘を行う者が
居るかは別の話ですが。
命のやりとりが
前提の制度ですからね。
……勝利した村人は
こう言ったそうです。
村長としてのあなたは死んだ、と。
一人の男として
一人の女を迎えに行ってくれ、と。
その村人と男村長の想いは
身近に見てきた村人も意は同じく
男村長を見送ることになります。
そうして、
女村長と交わした約束……
世界に平穏が訪れた時、
また、10年の歳月が経過した時。
エルフ族に伝わる秘境
春風の丘にてお会いしましょう、
そういったものでした。
途中、
何度か危険な目にあい、
ようやく春風の丘かと思いきや
もう道もわからず途方に暮れていた時、
どこからともなく
美麗な歌声が聴こえてきたそうです。
そのおかげで
なんとか春風の丘に到着しました。
あたりを見回すと
あたり一面、様々な花弁が咲き誇り
それは美しい情景だったとの事です。
そして、
春風の丘の奥地に居たのは……
その女村長でした。
二人は遠く離れていても
その想い違えることなく
その心通じ合い
交わした約束は果たされたのです。
ただひとつ、違った事がありまして……
そばに一人の
かわいらしい幼子が居たこと。
女村長の方は実は
別の村落の者に求婚されていて
そちらの方と結婚すれば
村落は安泰になる………など
運命の選択を迫られていたようです。
しかし想いを貫き拒否、
村人もそれを支持しました。
その時、
離れ離れになった想い人を胸に
作った歌がありまして、
その歌はとても美しい旋律で
その詩はせつなくも強く
聴く者の心を奪ったとききます。
その歌は
女村長の名を冠していましたが
現在ではより親しみやすい名として
『春風の想い歌』と呼ばれるように。
そして命の危機の中で
女村長は一人の母として
男村長の子を育て、その子と共に
遥か遠い危険な旅路を経て
春風の丘に辿り着きました。
そして
男村長を想うそのココロが
春風の丘に感応し
あたり一面は様々な草花咲き誇る
幻想的な光景になった、
ということです。
それから春風草を持ち帰り
各々の村落へと帰りましたが
既にそこに村人の姿は無く、
途方にくれる事となります
やがて諦め、
村長である男女は
新たな村落を作る決意をする事に。
そうしていくうちに
少しづつながら
エルフ族も集まり行きましたが
すべてのエルフ族がというわけではなく
全体の約10%ほどです。
集う事のなかった者の中には、
戦禍によりこの世を去った者も
少なくなかったといいますが、
それよりもこの二人の村長に
不信感を持ち、袂を別った……
という哀しい事実もあったようです。
こうして、
大きく分かれた2つのエルフ族。
袂を別ったエルフ族は
今もひっそりと新緑の中で
暮らしていると聞き、
外界との接触は拒絶してるといいます。
一方、
二人の村長が築き上げた村落はというと…
我らアルレマンシアの民の祖先は
戦乱の世を生き延び、
10年あまりも離れ離れになろうと
通じ合える深い愛と想いを宿し
春風草の元に結ばれた男女であり
この二人を心から送り出し祝福した
エルフ族たちの集まりでもあったのです。
二人の村長は我らアルレマンシア民の
遠い遠い祖先だったということです。
それからこの春風草の伝承は
平穏な時代を迎えた今でも
語り継がれる事となります。
エルフ族の男は
その永遠の愛を伝える為に
春風草を採りにいき、
それを持ち帰り女に渡し
その想いの強さと
その覚悟を伝えます。
その意味はアルレマンシアが
今のように絢爛な都市となり
このような平和を手に入れた今でも
何ら変わる事はありません。
ロミナ・グレングリーン
「ステキな話ー………」
ロミナの母親
「思うに、
あなたにはこの伝承を
お話したことはなかったですね。
……という事は、
自然と春風草に惹かれいった……
という事になります。」
ロミナの母親
「もしかしたら
遠い祖先のお導きかも?」
ロミナ・グレングリーン
「えへへー
でもー
そんな相手いないからー……」
ロミナの母親
「あら、
意外と近くに
居るかもしれないのよ?
あなたのパパがそうだったし。
………あ、そうね。
今度、女村長の作った
『春風の想い歌』教えるね?
…もうママには必要ないから」
近くに………?
…………あ。
エルシーク・ホワイトリバー
「何見てるの?」
ロミナ・グレングリーン
「あ!これはね、
春風の丘っていう所。」
エルシーク・ホワイトリバー
「へー、綺麗な所だね」
ロミナ・グレングリーン
「ほんとね!」
ロミナ・グレングリーン
「場所はエルフしか
知らないっていわれてるの。
行ってみたいんだけどなー……」
エルシーク・ホワイトリバー
「ダメだよ。危ないから。」
ロミナ・グレングリーン
「えっとね、
春風の丘の最奥部でしか
咲かない花があって……」
ロミナ・グレングリーン
「春風草っていって、ね……
…そのー………」
ロミナ・グレングリーン
(……これなんだけど………)
エルシーク・ホワイトリバー
「?」
エルシーク・ホワイトリバー
「……ロミナって、
春に咲く花ってかんじがする
んーと、
ほら、この花みたいな感じ」
ロミナ・グレングリーン
「さすがディバインエルフ!
春風草ってこれだよ!」
エルシーク・ホワイトリバー
「………ほんと綺麗な花。
ロミナに似合うと思う」
ロミナ・グレングリーン
(えっ……
…似合うって事はー……
……取って来てくれる……の?)
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・グレングリーン
エルシーク・ホワイトリバー
「あのっ」
「あのさ」
ロミナ・グレングリーン
「あっ、……なに?」
エルシーク・ホワイトリバー
「長老ニミュエ様は
古代エルフとも縁の深い方だから
もしかしたら知ってるかも。
聞いてこようか?」
ロミナ・グレングリーン
「えっ!?
ほんと!?!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「あ、ああ、ほんとだけど……」
ロミナ・グレングリーン
(うそ………
エルシークも私の事……?
………そんなことって……)
ロミナ・グレングリーン
「ありがとう………」
信じて、いいよね………?
長老ニミュエ・ローヘン
「あら」
ロミナ・グレングリーン
「あっ!ニミュエ様!」
長老ニミュエ・ローヘン
「ここを訪れますと
必ず見かけるような気がしますわ」
ロミナ・グレングリーン
「はい……
いつも居るようなかんじです……」
長老ニミュエ・ローヘン
「いつもそうして
外界の風景を
眺めてらっしゃるの?」
ロミナ・グレングリーン
「はい!好きなんです。
見てるとすごく
わくわくしてくるというか………」
長老ニミュエ・ローヘン
「ふふっ
ロミナは昔から
元気なところがありましたものね。
……………あら」
長老ニミュエ・ローヘン
「春風草の写真………
本当に綺麗ですわ。」
ロミナ・グレングリーン
「…………はい」
長老ニミュエ・ローヘン
「………あの…
よろしければ、
今度お見せしましょうか?」
ロミナ・グレングリーン
「えっ!?」
長老ニミュエ・ローヘン
「えっ?」
ロミナ・グレングリーン
(なんでニミュエ様が……)
……私の為に
聞いてくれるんじゃなかったの…?
ロミナ・グレングリーン
「………………はい。」
ロミナ・グレングリーン
(エルシークは……
…ニミュエ様と………?
……お似合いだもんね。
長老様と世界を救う勇者様……
……私なんか…………
………でも……)
ロミナ・グレングリーン
「……………ハァ……」
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ!」
ロミナ・グレングリーン
「きゃっ!?
なになに?どうしたの?」
エルシーク・ホワイトリバー
「………これ。」
ロミナ・グレングリーン
「………これって!!!」
ロミナ・グレングリーン
「本当に
とってきちゃったの!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「本当にとってきちゃったよ?」
ロミナ・グレングリーン
(私と……結婚したいの?
ほんとに…………?
私で、…いいの?ねえっ…)
エルシーク・ホワイトリバー
「………………?」
ロミナ・グレングリーン
「エルシーク………」
ロミナ・グレングリーン
「わたし、うれしいよ………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ…………」
ロミナ・グレングリーン
「エルシーク…………」
………大好き。
ずっとエルシークが一番だよ
ロミナ・グレングリーン
(……気合いいれちゃお!)
?商店のおやじ
「嬢ちゃんに良く似合うよ!
またごひいきにー」
ロミナ・グレングリーン
(………ちょっと、高かったけど…
かわいいワンピースにしちゃった。
えへへ……
……エルシーク来ないかなー…)
ルシーク・ホワイトリバー
「今日はどこの都市の写真?」
ロミナ・グレングリーン
「………あっ!?
…びっくりしたー……
いきなり後ろに立たないでよー」
エルシーク・ホワイトリバー
「ごめんごめん」
ロミナ・グレングリーン
「…ここは、
荒凪古港っていう港」
エルシーク・ホワイトリバー
「……綺麗な港だね」
ロミナ・グレングリーン
「綺麗でしょ?」
エルシーク・ホワイトリバー
「うん」
ロミナ・グレングリーン
「ふふっ
海っていうのがあってね……」
ロミナ・グレングリーン
「天気のいい日は、
水着になって海を泳いだり
砂浜でボール遊びしたり
砂でお城作ったり
海の家っていうお店で
ジュース飲んだりパフェ食べたり
浜辺に敷いたシートの上に寝て
日焼けしたりするんだってー」
エルシーク・ホワイトリバー
「そうなんだ」
エルシーク・ホワイトリバー
「……なんかこういう話する時
本当に嬉しそうに話すよね」
ロミナ・グレングリーン
「…えへへー
………行ってみたいなー…」
エルシーク・ホワイトリバー
「行けるよ」
ロミナ・グレングリーン
「えー?だってここは……」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・グレングリーン
「どしたの?」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ほんと、綺麗だな……」
ロミナ・グレングリーン
(……もしかして、私のこと?
………うれしい…
………エルシーク………
…連れてってほしいな……)
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・グレングリーン
「あの」
エルシーク・ホワイトリバー
「あ、うん」
ロミナ・グレングリーン
「ディバインエルフって、
人の心が読めるんだよね……?」
エルシーク・ホワイトリバー
「大体合ってるよ」
ロミナ・グレングリーン
(……エルシーク………
エルシークと結婚したい…
ずっと一緒にいたい……!
だからまた話そ!
ここで待ってるからっ!)
ロミナ・グレングリーン
「………………そっか!」
エルシーク・ホワイトリバー
「……なになに?」
ロミナ・グレングリーン
「なんでもなーい!
ばいばーい」
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ!
ちょっと待ってよー!
どうしたの~?」
ロミナ・グレングリーン
「しらなーい」
ロミナ・グレングリーン
(とぼけちゃって……ふふっ)
長老ニミュエ・ローヘン
「あら、今日も楽しそうに
見ていらしてるのね」
ロミナ・グレングリーン
「あっ………ニミュエ様!」
長老ニミュエ・ローヘン
「……ほんと、素敵ね。」
長老ニミュエ・ローヘン
「春風草」
ロミナ・グレングリーン
「はい、とっても!」
長老ニミュエ・ローヘン
「ふふ、それ」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシークに貰ったのでしょう?」
ロミナ・グレングリーン
「っ!?!?」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
ロミナ・グレングリーン
「…………はい」
長老ニミュエ・ローヘン
「そんなに
恐縮なさらなくても……」
ロミナ・グレングリーン
「でも、ディバインエルフとじゃ
やっぱり、私なんかじゃ……」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
ロミナ・グレングリーン
「エルシークには
エルシークの使命がありますし……
そんな人と………
私なんかでいいのかな、って……
………思ってます。」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
長老ニミュエ・ローヘン
「………何か
勘違いなさっていませんか?」
ロミナ・グレングリーン
「………え?」
長老ニミュエ・ローヘン
「その口ぶり、
まるでエルシークが
あなたの事を愛してるような……
そのように聞こえましたが……」
ロミナ・グレングリーン
「え、でも、これ………
危険な旅をしてまで
春風草を私の為に……」
長老ニミュエ・ローヘン
「いいえ、それは違いますよ。
エルシークは…
…ロミナ。あなたの気持ちの
何もかもを読み取り、
既に知っているのです。
……それはご存知ですね?」
ロミナ・グレングリーン
「はい。
ディバインエルフは
人の心が読めるって聞いたので……」
長老ニミュエ・ローヘン
「……ロミナはエルシークにとって
幼少の頃から屈託無く接する
ただ一人の幼馴染です。
ですから、
ディバインエルフである
自身の立場と格差を自覚しながらも
それでも尚、
ロミナの気持ちを思い計り
精一杯の優しさの形として
春風草を分け与え下さったのです。」
ロミナ・グレングリーン
「……………え……」
長老ニミュエ・ローヘン
「よく考えてもみなさい。
あなたの気持ちを
すべて知っているというのに
その割になぜか積極的な行動に
出てくれないではありませんか…」
ロミナ・グレングリーン
「…………はい……
それは思っていました………」
長老ニミュエ・ローヘン
「……エルシークは
お優しいでしょう?」
ロミナ・グレングリーン
「…………はい。とっても。」
長老ニミュエ・ローヘン
「男というものは、
相手を傷つけないように…
想いに気づいていたとしても
気づかないフリをして
そのままの関係で
何事もなかったかのように
振る舞い続けるものなのですよ?」
ロミナ・グレングリーン
「………そうなんですかー…」
長老ニミュエ・ローヘン
「しかし、
普通に接するだけならば
それは私も許可していますから。
あなたは……
ロミナは、
小さな頃からよく知っていますし。」
ロミナ・グレングリーン
(……………え?)
長老ニミュエ・ローヘン
「……本来ならば、
許されざる事ですが……」
ロミナ・グレングリーン
「……………え?
それって、どういう…………」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシークは
このニミュエと
契りを交わした仲なのですよ?
…………ほら、春風草。」
ロミナ・グレングリーン
「っ!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「実は、私の為に
採ってきてくださったのです。
ロミナにも幼馴染として
仲良くして頂いたのだから
その気持ちもこめて
差し上げてくださいと
私がそうエルシークに頼んだのです。」
ロミナ・グレングリーン
「………え、………え…」
長老ニミュエ・ローヘン
「そして未来永劫、その生涯を
たとえ幾千の苦難あれど
この聖都の秩序と平穏の為、
あなた方市民の幸福の為、
共に寄り添い生きていくと
誓い合った仲なのです。」
長老ニミュエ・ローヘン
「……その代わりが
あなたに務まりますか?」
ロミナ・グレングリーン
「………………」
長老ニミュエ・ローヘン
「取立て突出した能力も持たぬ
あなたのような平凡な者に、
共に世界の秩序と平静を保つ
宿業を抱え生きてゆけますか?」
ロミナ・グレングリーン
「………………」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシークは本当に優しいお方。
……その配慮を、
どうか察して頂けませんか?」
ロミナ・グレングリーン
「………………」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシークの為にも」
ロミナ・グレングリーン
「………………」
ロミナ・グレングリーン
「………わかりました」
それがエルシークの
幸せになるなら……私は…
長老ニミュエ・ローヘン
「ロミナ。
先日は少々
言い過ぎたかもしれません……
無礼を詫びに参りました。」
ロミナ・グレングリーン
「あっ!そんな!!
顔をあげてくださいニミュエ様!」
ロミナ・グレングリーン
「……あれから
よく考えてみたんです。
エルシークも
変わらず何もしてこないし
優しいのは変わらないけど、
優しいだけっていうか………
……やっぱり、
ニミュエ様の仰る通りなんだなって
そう思えました………」
ロミナ・グレングリーン
「ただ、
私を気遣ってくれてた…
ただそれだけなんだって……
いくら心の中で
答えて欲しいって訴えても
エルシークはいつも
知らないフリです……」
ロミナ・グレングリーン
「………あのね、
実は、なんか
そういう事なんじゃないかなーって
ちょっと思ってたんです。
エルシークはディバインエルフで
人の心が読めたり、
特殊な力を持ち合わせる
特別なハイエルフ。
このアルレマンシアを管理する
長老会に所属していて
この聖都の秩序だけじゃなくて
アルボレアの秩序を保つ責務を担って
今も時折旅に出てる……」
ロミナ・グレングリーン
「そんなエルシークが、
まさか私みたいな
なんのとりえもない女を、
その、
………愛してくれてるなんて
そんなわけないよね…って。」
ロミナ・グレングリーン
「でもエルシークは本当に優しくて…
アルレマンシアの人は
私の話にまったく興味ないけど
エルシークだけは、
本当にちゃんと聞いてくれて……」
ロミナ・グレングリーン
「………ほんとに、聞いてくれて…」
ロミナ・グレングリーン
「もしかしたら、
エルシークはもしかしたら…
私のこと……って…………」
ロミナ・グレングリーン
「ここで春風草の写真のところ
ずっと開いたままにしてたのは、
エルシークが来て、
これの話聞いてくれないかなーって
もし春風草とってきてくれたら
私の変な勘違いかもしれないのも
本当かもしれないって……
確かめたかった。
……でも違った。」
ロミナ・グレングリーン
「……私ったらばかみたい…
一人で舞い上がって……」
長老ニミュエ・ローヘン
「……ロミナ。
心中お察ししますわ………
……しかしこのままでは
あまりにもつら過ぎるでしょう……
私としても
ロミナの気持ちを知っている立場。
私だけ幸せになど
心から成る事はできませんわ……」
ロミナ・グレングリーン
「………いえっ!!
ニミュエ様とエルシークなら
本当にお似合いの
夫婦になれますよ!!!
………本当に……………」
長老ニミュエ・ローヘン
「ロミナ………」
長老ニミュエ・ローヘン
「……そこで、
一つ提案があるのです。」
ロミナ・グレングリーン
「…………提案、ですか?」
長老ニミュエ・ローヘン
「たとえ平民でも
『ある方法』を用いれば
長老会に属す事も可能です。
エルシークの最も近い位置で
ディバインエルフとしての宿業や
アルレマンシアの秩序の管理を
共に担えるかもしれない……
……そういう提案です。」
ロミナ・グレングリーン
「えっ!?
それって
どういう『方法』ですか!?」
長老ニミュエ・ローヘン
「……覚悟、おありですか?」
ロミナ・グレングリーン
「……覚悟、ですか?」
長老ニミュエ・ローヘン
「自らの運命を
決定付けるだけの………
それほどまでの覚悟、です。」
ロミナ・グレングリーン
「………はい。
エルシークと………
堂々と
一緒に居られるのなら………
それも同じ立場で共に
同じ仕事が出来るんなら………」
ロミナ・グレングリーン
「私、なんでもします!!」
ロミナ。
長老会に属すには
長老会縁の方と婚姻を結ぶ事で
成し得る事ができるのですよ
えっ……………?
?頼りなさそうな声
「あの………」
ロミナ・グレングリーン
「はい?」
?頼りなさそうな声
「ロミナ、さんですか?」
ロミナ・グレングリーン
「あ、そうですけど………」
?頼りなさそうな声
「いつもここで
いろんな写真を見てらっしゃる
その様子が妙に気になりまして……」
ロミナ・グレングリーン
「は、はあ………」
大長老の息子ベリアム
「あ、申し遅れました。
私、
大長老の息子のベリアムです」
ロミナ・グレングリーン
「あ、そうなんですか」
ロミナ・グレングリーン
「っでっ!
ぇええぇえーーーっ!?」
大長老の息子ベリアム
「はは………
そんな驚かれなくても……」
ロミナ・グレングリーン
「だ、大長老様といえば
この聖都を管理する長老会の
更に一番エライ人でしょーっ!?
大長老の息子ベリアム
「ま、まあ
それはそうなんですけど……
……それより
外のお話を少ししませんか?」
は、はぁ………
大長老の息子ベリアム
「ロミナさん
この前の話なんですけど……」
大長老の息子ベリアム
「………はい、春風草。
春風の丘よりお持ちしましたっ!」
ロミナ・グレングリーン
「………!?
ベ、ベリアム様、そんな………
わ、わたしそんな
何もできないし
普通のハイエルフだし
偉くもなんともないですよ!?
そんな、恐れ多いですっ!!」
大長老の息子ベリアム
「ロミナさん………
……いいえ、これは
私の本当の気持ちです。
最初は確かに物珍しさもありました。
いつもここで黙々と
外界の写真を眺めているかと思えば
時折、心の中で一喜一憂してるのが
手に取るようにわかる様をしてみたり」
ロミナ・グレングリーン
「えっ!?
私、そんな
恥ずかしい事してましたか……」
大長老の息子ベリアム
「私は本気です……
それとも、
他に想い人が……?」
ロミナ・グレングリーン
「えっ!?」
ロミナ・グレングリーン
(エルシーク…………)
………いえ、居ないです
ロミナ・グレングリーン
「あっ………エルシーク……」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・グレングリーン
「あの、私…………
結婚する事になったの。」
エルシーク・ホワイトリバー
「………そうか」
ロミナ・グレングリーン
「これからは、
大長老様のもとで
アルレマンシアの秩序を
管理する側になるから………」
エルシーク・ホワイトリバー
「おめでとう。
君なら十分に務まるよ」
ロミナ・グレングリーン
「うん」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・グレングリーン
(………私をここから連れ出して!
……一緒に……行きたい…
…危険でも、あなたとなら…
あなたが私を選んでくれるなら…!)
ロミナ・グレングリーン
「………あ、のっ!」
エルシーク・ホワイトリバー
「…責務が押し迫っていてね。
これで失礼するよ。」
ロミナ・グレングリーン
「………あ、うん。」
エルシーク・ホワイトリバー
「………ロミナ。」
ロミナ・グレングリーン
「えっ!?………何???」
ロミナ・グレングリーン
(………連れてってくれるの?
……エルシーク………)
エルシーク・ホワイトリバー
「ディバインエルフの名のもとに
君の御魂とその未来に
光の加護と幸多からん事を願う」
ロミナ・グレングリーン
(私が欲しいのはそんな
社交辞令じゃなくてっ………!!)
長老ニミュエ・ローヘン
「男というものは、
相手を傷つけないように…
想いに気づいていたとしても
気づかないフリをして
そのままの関係で
何事もなかったように
振る舞い続けるものなのですよ?」
ロミナ・グレングリーン
(………そっか…………
……エルシークは優しいから…)
ロミナ・グレングリーン
「…………うん……」
ロミナ・グレングリーン
「ありがとう……」
ロミナ・グレングリーン
(エルシーク………
……愛してます……
…これからもずっと……)
大長老の息子ベリアム
「ロミナ!
よくがんばった!
ちゃんと生まれたよ!
元気な女の子だって!」
ロミナ・シルバーレイン
「はぁ………はぁ……
……女の、子…
それならミーシャ、ね。」
ミーシャ
「おぎゃーおぎゃー」
ミーシャ………
かわいいかわいい
わたくしの子………
こんなに泣いて………
こんなに
つらくて悲しいのに
こんなママの為に
生まれてきてくれて
ほんとうにありがとう………
エルシーク・ホワイトリバー
「僕は、
ディバインエルフとして
生まれてきて
よかったと思ってるよ。
アルレマンシアに居を構えながら
こうして外界を旅出来る。
それに、」
ロミナ・シルバーレイン
「心も読めるから?」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「実は、そんなに
人の心を覗き見てるわけじゃないよ
本当に必要な時にしか使わない。
この能力は。」
エルシーク・ホワイトリバー
「あと、まだまだ
完全習熟するに至ってない……
未だに、
人の心を読むまでに至るには
体を光らせなければならない。
こっそりと
人の心を読むにあたって
これは致命的ってやつさ」
エルシーク・ホワイトリバー
「僕は、
ディバインエルフなんて祀られ
アルレマンシアじゃ尊敬と羨望の
眼差しで見られる存在だけど、
その実、
ディバインエルフとしても、」
ロミナ・シルバーレイン
(え…………?
……いつも読んでるんじゃ…?)
エルシーク・ホワイトリバー
「…ハイエルフとしても、
中途半端なやつだよ」
ロミナ・シルバーレイン
(……あたくしの前で
光ったこと、なかった、よね……?)
ロミナ・シルバーレイン
「そう、なんだ………」
ロミナ・シルバーレイン
「光らないと」
ロミナ・シルバーレイン
「読めないんだ………」
長老ニミュエ・ローヘン
「いいえ、それは違いますよ。
ディバインエルフ様は…
…ロミナ。あなたの気持ちの
何もかもを読み取り、
既に知っているのです。
……それはご存知ですね?」
ロミナ・グレングリーン
「はい。
ディバインエルフは
人の心が読めるって聞いたので……」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシークは
このニミュエと
契りを交わした仲なのですよ?
…………ほら、春風草。」
長老ニミュエ・ローヘン
「実は、私の為に
採ってきてくださったのです。
ロミナにも幼馴染として
仲良くして頂いたのだから
その気持ちもこめて
差し上げてくださいと
私がそうエルシークに頼んだのです。」
ロミナ・グレングリーン
(どういうこと!?)
…………まさか……
ロミナ・シルバーレイン
「………この春風草…
……本当に、
採ってきてくださったの?」
大長老の息子ベリアム
「……もちろんだよ」
ジロッ
ロミナ・シルバーレイン
「本当に?」
大長老の息子ベリアム
「もちろんだよ!!」
ロミナ・シルバーレイン
「では、質問を変えましょう。
……旅に出ていた割に
エルシークが実際に見聞してきた話と
食い違う点が多すぎる点……
しかもどこかの文献に書いてあるような
当たり障りない内容ばかり!!
あなたは本当に
旅に出ていた事があったんですか?
実際にはないんでしょう!?」
大長老の息子ベリアム
「……そ、そんなことないって!」
ロミナ・シルバーレイン
「ニミュエ様が
すべて話してくださったわ!!
この春風草……
本当はニミュエ様の
ものなんでしょう!?」
大長老の息子ベリアム
「ひっ!?
な、なんでそれを!!」
ロミナ・シルバーレイン
(………やっぱり!)
ニミュエ………!
そうか!
そういう事っ………!!
絶対に
許せないっ!!!!
ロミナ・シルバーレイン
「ニミュエ様。
いらっしゃいますか?」
長老ニミュエ・ローヘン
「はい、ここに。」
ロミナ・シルバーレイン
「…今日は大事な話がありまして」
長老ニミュエ・ローヘン
「………大事な、話ですか?」
ロミナ・シルバーレイン
「以前エルシーク様より
貰い受けたという
春風草をお見せ頂きたく。」
長老ニミュエ・ローヘン
「えっ?」
ロミナ・シルバーレイン
「………是非お見せ頂きたく。」
長老ニミュエ・ローヘン
「……エルシーク様が
旅立たれた際、
お持ちになられましたわ。」
ロミナ・シルバーレイン
「そうですか。」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「………………」
長老ニミュエ・ローヘン
「……まだ、何か?」
ロミナ・シルバーレイン
「契りの証そのものである春風草を、
なにが起こるかわからぬ上
気候、温度、湿度に強く影響を受ける
旅先にまで持ち込むとは
到底思えませんが。
この聖都に保管しておくのが妥当」
長老ニミュエ・ローヘン
「………そう言われましても…」
ロミナ・シルバーレイン
「エルシーク様がお戻りになられた時、
改めてお伺いさせて頂きますが……」
ロミナ・シルバーレイン
「それでもよろしいでしょうか?」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「………お尋ねしておりますが…」
長老ニミュエ・ローヘン
「……………あの…」
ロミナ・シルバーレイン
「………………」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「…………聞いてるんだよ…」
長老ニミュエ・ローヘン
「…………え?」
ロミナ・シルバーレイン
「それでもいいかと
聞いているッ!
長老
ニミュエ・ローヘンッ!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「…………ロミナっ!?」
スッ
スッ
ササッ
バッ
ロミナ・シルバーレイン
「ニミュエ!あなたは
エルシークが本当は
人の心を読むにあたって
体を光らせなければならないと
知っていたにも関わらず!
私がそれを知らない事も
十分承知していたにも関わらず!
私の気持ちはすべて
エルシークに筒抜けだと
私に吹き込むだけに飽き足らずッ!
エルシークを我が物とせんが為に
この私をベリアムと結婚させるよう
裏で謀略をめぐらせ
挙句、
エルシークと共に仕事が出来る!
誰に憚る事なく共に居られる!などと
甘言惑わし当の本人はそ知らぬ顔!!
私はその結果
望まぬ結婚をする事になったわ!
もしそうだと知ってたら!!
もしエルシークは
私の気持ちを読んでなど
いなかったのだと知っていたらッ!!
私は
こんな結婚など
していなかったのに!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「ロミナ!!
本当にごめんなさいっ!!
私、こんな」
ロミナ・シルバーレイン
「長老ニミュエ・ローヘンッ!!
この
ロミナ・シルバーレインは
ニミュエッッ!!!!
貴方に決闘を
申し付けるッ!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「ロミナっ!?
あなた何を
ばかな事を言ってるの!?」
ロミナ・シルバーレイン
「ニミュエ!!
決闘を受けなさいッ!!
あなたを倒し
私が長老と成り代わって
アルレマンシアを変えてみせる!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「ロミナ!?
私だってエルシークの事
本当に本当に……愛して…
…でもまさか
こんな事になるだなんて
思ってなかったの!!」
ロミナ・シルバーレイン
「言い訳など聞きたくないッ!!
ニミュエ!!
私、あなたに憧れてたのに!
信頼してたのに!!
こんなひどい事ってないわッ!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「………ロミナ…
外界が危険な世界なのは本当よ?
エルシークは世界の秩序と
平穏を在るべき姿に保つ使命がある。
それに付き添うには
ロミナ。あなたには………」
ロミナ・シルバーレイン
(………そんなの……
……そんなの関係ない!!!)
長老ニミュエ・ローヘン
「私は、あなたと
エルシークの為を思って……
お互いがお互いに
本当に幸せで在れる関係に……
そう、思って……」
ダンッ
ロミナ・シルバーレイン
「ふざけないで!!
知ってたら
大長老の息子となんて
結婚しなかったのに!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「…………ロミナ…」
長老ニミュエ・ローヘン
「……はっ!?
…………しっ!!
ロミナ!
これ以上は
いけませんっ……!!」
ロミナ・シルバーレイン
「あんな、
好きでもない
人の子を……!!」
ガチャ………
ロミナ・シルバーレイン
「さあッ!!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「……ロミナの娘?
いつからそこに………」
ミーシャ・シルバーレイン
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「………ミー……シャ?」
ダダッ
ロミナ・シルバーレイン
「ミーシャ!!
あっ待ちなさいっ!!
…なんということ……!!」
ギッ
ロミナ・シルバーレイン
「絶対に許さない…!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「………ロミナ…っ!!」
ロミナ・シルバーレイン
「ミーシャ! 」
(ああっ!!
私の大事なミーシャっ!!
……あなたには
何の罪もないというのにっ!!)
エルシーク………
いっそこのまま………
あてくしがんばるー!
ハッ
ミーシャ…………
そっか…………
こんな気持ちになる事を恐れて
この歌を作ったのね…………
いつか必ず巡り会える時まで
間違った選択をする事ないよう……
弱さに負けないように
自身を戒める意味をこめて
この『春風の想い歌』を。
ロミナ・グレングリーン
「あなた
でぃばいんえりゅふでしょ!!
しっかりしなちゃいー!!」
エルシーク・ホワイトリバー
「ひぐっ………」
ロミナ・グレングリーン
「おとこのこでしょ!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「……………うん……
……ごめん……………」
ロミナ・グレングリーン
「……よちよち」
ロミナ・グレングリーン
「よっ!
あーっ
またぼけーっとした顔してるー」
ロミナ・グレングリーン
「こんな顔は、こうしてー…」
ぐに ぐに
エルシーク・ホワイトリバー
「こういう顔なんだから
しょうがないんだってー!!」
愛しのあなたは遠い所へ?
色褪せぬ永久の愛
誓ったばかりに
悲しい時にもつらい時にも
空に降るあの星を
あなたと想い
望まぬ契りを交わすのですか?
どうすれば?
ねぇあなた?
言葉を待つ
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ!」
ロミナ・グレングリーン
「きゃっ!?
なになに?どうしたの?」
エルシーク・ホワイトリバー
「………これ。」
ロミナ・グレングリーン
「………これって!!!」
ロミナ・グレングリーン
「本当に
とってきちゃったの!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「本当にとってきちゃったよ?」
ロミナ・グレングリーン
「エルシーク………」
ロミナ・グレングリーン
「わたし、うれしいよ………」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシークは
このニミュエと
契りを交わした仲なのですよ?
…………ほら、春風草。」
ロミナ・グレングリーン
「っ!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「たとえ平民でも
『ある方法』を用いれば
長老会に属す事も可能です。
エルシークの最も近い位置で
ディバインエルフとしての宿業や
アルレマンシアの秩序の管理を
共に担えるかもしれない……
……そういう提案です。」
ロミナ・グレングリーン
(………私をここから連れ出して!
……一緒に………行きたい…)
ロミナ・グレングリーン
「………あ、のっ!」
エルシーク・ホワイトリバー
「…責務が押し迫っていてね。
これで失礼するよ。」
ロミナ・グレングリーン
「………あ、うん。」
ありがとう私の愛する人よ
一度でもこの想い揺れた私に
静かに優しく応えてくれて
いつまでも
いつまでも
あなたを待つ
?市民の親子
「ママーすっごいきれいな声ー」
?市民の親子
「あの方は長老会の………
…本当に、美しい歌声ね
……あのね、この歌は
春風の想い歌といって昔……」
二人の村長のように
想いの力が強ければ
願いが叶うわけじゃないのね…
だって、
世界中の誰より
愛してる自信があるもの
あの村長に負けないくらい…
ニミュエ様にも……………
長老ニミュエ・ローヘン
「ロミナ。
あなたは明日の早朝より
追放処分がくだされます。
今日中に荷物をまとめて
出立する準備をしてください。」
ロミナ・シルバーレイン
「はい
今までお世話になりました」
長老ニミュエ・ローヘン
「………間違っても
その振る舞いを
外界に持ち込まぬように。
本当に、
死んでしまいますよ?」
ロミナ・シルバーレイン
「………心にもない事を」
長老ニミュエ・ローヘン
「…………ロミナ……」
ロミナ・シルバーレイン
「もう、
二度と会う事はないでしょう
ですから、
最期に一つだけ言わせて下さい。」
長老ニミュエ・ローヘン
「………はい、お受け致します。」
ロミナ・シルバーレイン
(…………エルシーク……)
ロミナ・シルバーレイン
「………エルシークのこと
幸せにしてあげてください……
きっと、今は
幸せじゃないと思うから。」
長老ニミュエ・ローヘン
「………ロミナ!?
あなたという人はっ!!」
ロミナ・シルバーレイン
「…………お願いします。」
長老ニミュエ・ローヘン
「…………はい、必ず。」
ロミナ・シルバーレイン
「…………さようなら」
ザッ
ロミナ・シルバーレイン
「これは
どこへ向かっているのかしら?」
?闇輸送業者
「サボテン村です
夕刻前には到着しますので。」
ミーシャ・シルバーレイン
「ママー
すっごいきれいだよー」
ロミナ・シルバーレイン
「あらぁ………
そんなにママってきれい?」
ミーシャ・シルバーレイン
「ちがうよ!
おそとだよー」
ロミナ・シルバーレイン
「………あ、そ、そうね………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ほんと、綺麗だな……」
ロミナ・グレングリーン
(……もしかして、私のこと?
………うれしい…
………エルシーク………
…連れてってほしいな……)
ロミナ・シルバーレイン
(エルシーク…………)
ロミナ・シルバーレイン
(……エルシークと一緒なら
どこだっていいのに…………)
ロミナ・シルバーレイン
「愛しのあなたは遠いところへ……」
古代に生きた遠い我らの祖先
二人の村長………
女村長アリアと
男村長ドラクゥが
長い時を経てもその愛は変わらず
再会し想いを遂げられたように、
わたくしはいつまでも想い続けます。
『春風の想い歌』を…………
『アリア』を胸に想いながら。
いつか、ミーシャにも
教える時が来るかしら?
あたくしにはもう
必要なくなる時が来るかしら?
……ミーシャ。
あなたは、
あたくしみたいに
間違えちゃだめだからね……
絶対よ?ミーシャ………
ぽちっとしてくれたおかげで
1位にうあー
みなさんありがとなのです!