集会所管理人バイロン
(確かに、
ここに居たのだ。)
集会所管理人バイロン
(報酬担当官ロミナは……)
集会所管理人バイロン
(確かに、ここにな……)
集会所管理人バイロン
(ロミナは実に優秀だった。
笑顔絶やさず、
また、聡明で温和な人柄から、
社会の摩擦、欲、責務と労務に
疲れ帰った旅人にとって、
報酬による達成感と共に、
ロミナ自身の
女神の抱擁の如き振る舞いは
ある種の報酬として、
多くの者が魅了されたことだろう。)
集会所管理人バイロン
(その人となりに
我々としても本当に助けられた。
ヴェリカ集会所に従事する身としても
実に鼻高く在れたものだ。)
集会所管理人バイロン
(少々、気が強い面もあり
それは裏を返せば
芯の強さの表れでもあるが、
時に分け隔てなく
叱り付ける時もあり……
しかし不思議と、
その厳しさの向こうに
愛を感じとれる。
法や規則に括られる事のない、
形式ばった善行や秩序では成し得ない
本当に大切な事を教えてくれる。
そんな女性でもあった。)
集会所管理人バイロン
(ワシもいくつか、
ハッ!とした時もあったな。
規則規則と生きていると
何が真に善き事かを忘れてしまう。
そんな日々の中で出した結論は
結局は井の中の蛙でしかない。
無意識的に
同じ結論を出したいが為に、
考えてるようで全く考えておらず
それ自体に自身が気づくには
相当の知性と神の如し視野…
そして聡明さが求められるだろう。)
集会所管理人バイロン
(バラカのその記憶力と再現性は
他の種族に類を見ないほどだ。
あらゆる文献の知識と、
あらゆる技術の仕組みを記憶し、
それを一字一句紛う事なく
その口頭にて継承、
または書面へと写本し継承と成す。)
集会所管理人バイロン
(ワシは、それを完璧に記憶し、
一字一句確実に間違える事なく
移し替える事が出来るのなら、
それで継承は成されると思っていた。)
集会所管理人バイロン
(…ワシは、
ロミナに助けられた事がある。
規則は当然重要で
人々を導く灯火ではある。
だが、規則とは、
そのもの自体が正しさであるからこそ
それを扱う人間が…
より慎重に、より吟味して
振るう方向を見定めなければならない。
規則を扱うのも、適用されるのも
紛れも無く人なのだから、と。)
集会所管理人バイロン
(ワシは多くの伝承や
知識を継承せしバラカという種族。
バラカの本分は
寸分たがわぬ精度と、
永遠ともいえる継承性にあるが、
そこに人心も加味されていないなら、
それは何もバラカという種族でなくても
記録媒体で継承すれば済む話だ、と。
お恥ずかしながら、
そうした説教を
ロミナより受けた事がある)
集会所管理人バイロン
(ワシには師匠がおったが、
耳にタコが出来るほどに
言われていた事を思い出したよ。
ただ知識や伝承を継承していくだけならば
別に本や端末等の記録媒体でも用は足る。
だが
そこに正しき方向性を見出し、
網羅された伝承と知識の中に
隠されたメッセージを紐解き
後世にまで語り継いでいくのは
機械では決して成し得ない事なのだと。
人がどう善くあるべきなのか。
それを常に念頭に置き、
見定める審美眼をその心に宿し
自身に核たる信念を持ち、
その真意を理解し得なければ、
バラカは他種族はおろか、
血も涙も通わぬ魂なき端末にも劣る…
そんなモノに成り下がるだろう、とな。)
集会所管理人バイロン
(奇しくも、バラカにではなく、
絶対の法と規律の信奉者である
ハイエルフにそれを諭されるとは
なんとも皮肉なものよ…)
集会所管理人バイロン
(だが、
ロミナに言われるとなぜかスっと
このココロに入ってくるのだ。
その時、
ふと頭の中にこの言葉が浮かんだ。)
集会所管理人バイロン
(これが、
ワシの目指す『バラカ』とする種族の
ありのままの姿なのかもしれない…
法や規則に括られる事なく、
形式ばった善行や秩序では
決して達する事のない真の継承…)
集会所管理人バイロン
(ワシにバラカという種族としての
誇りと唯一性。
継承という曖昧な特性の真髄。
その真の価値を見出させてくれた。)
集会所管理人バイロン
(ワシは、
ロミナに対して
返しきれない恩義を受けた。
この風体からよくネタにされたり
小ばかにされたりするのがバラカ)
集会所管理人バイロン
(ま、
ポポリほどではないが…。)
集会所管理人バイロン
(その時からだな。
ヴェリカ集会所の面々を
篤く関わるべき仲間だと思ったのは。)
集会所管理人バイロン
(その時、ワシは気づいたのだよ。)
集会所管理人バイロン
(ワシがロミナに観た、
厳しさの裏にある愛…と感じたのは、
叱る相手を、
単なる厄介者とは見ておらず、
ロミナにとっては、
旧来の仲間や家族……
それらと同じく見ているのだな、と。)
集会所管理人バイロン
(ワシは、
ハイエルフを情の欠片もない
秩序の執行者だと思っていた。
ハイエルフであれば、
その誰もがこれにあたるのだと。
しかし、
そうした偏見を通してしか
人を観れていなかった自身にこそ
問題があったのだという事を、
此処に確信するに至るわけである。)
集会所管理人バイロン
(継承を担うバラカであるこのワシが
ハイエルフについて
誤って継承してしまうところだったよ。
実にみっともない限りであった。)
白銀印章交換担当官セブリル
(…そんなハイエルフばっかりだったら
アルレマンシアももっといい所に
なったんじゃないかなー)
青銅印章交換担当官ショリン
(いいえ、それは違うわね。)
青銅印章交換担当官ショリン
(太古より、なぜハイエルフは
それ程までに秩序を重んじてきたか。
時に、行過ぎた秩序は
皮肉にも混沌と成り得る。
あれほどまでの
秩序を制度として維持し続け、
数千万年の時の中で保ちゆくのは、
並大抵の事ではありません。)
青銅印章交換担当官ショリン
(聞けば、カイアトールとは違い、
いかに上層部の親族であっても
その秩序を乱せば一様に
追放されるそうではありませんか。
太古よりこのアルボレアの
シャラ南部大陸に座した
魔法国家アルレマンシア。
対し、陸続くシャラ北部の位置に
鍛冶帝国カイアトール。)
青銅印章交換担当官ショリン
(アルレマンシアがもし、
堅牢なる秩序に徹していなければ
あの粗暴で暴力的かつ
自己中心的なアーマンに
このアルボレアは
牛耳られていたとも想定します。)
白銀印章交換担当官セブリル
(そういうもんかねー?)
青銅印章交換担当官ショリン
(こと、キャスタニックは
その本質は流浪です。
確かに細工技術は目を見張り
その生来の勝負強さは
他種族の群を抜いていますが
一箇所に留まる事なく
簡単に結果の出る
目先の利益に容易に飛びつきます。
それは往々にして
法や道理に反するものです。)
白銀印章交換担当官セブリル
(へーすごーい)
青銅印章交換担当官ショリン
(ハイエルフが秩序ならば
キャスタニックは混沌。
かの本能的なアーマンですら
かような秩序は持ち合わせています。
そのキャスタニックが
事もあろうに
このハイエルフの
秩序を弄するなど、愚の骨頂。)
白銀印章交換担当官セブリル
(そっかー)
青銅印章交換担当官ショリン
(…………………)
集会所事務員サラミア
(…………便利…)
黄金印章交換担当官アイシス
(………あれ、
今度使わせてもらおっと☆)
集会所管理人バイロン
(……話は戻るが…
そんなロミナが報酬担当官として
このヴェリカ集会所を訪れ、
ここでの仕事にも
慣れ始めた頃の話となる。
期間にして、
およそ半年あまりか……)
集会所管理人バイロン
(あるガチ勢が
このヴェリカ集会所を
利用する事となった。)
集会所管理人バイロン
(名をバタハル・ヌアン。
アーマン族の戦士で、
自ら鍛造した馬車と武装で
領間、市街間の護衛輸送、
あらゆる経路での物資運搬といった
輸送のスペシャリストだ。
戦士としても一流で、
輸送任務としてはこれほど
適した人材は居ないだろう。)
集会所管理人バイロン
(そのバタハルは、
かれらの故郷である
カイアトールにおいては
幹部の座についていた者だが、
より多くの富を獲得すべく
ヴェリカへと渡ったのである。)
集会所管理人バイロン
(彼は、このヴェリカにて
多くの依頼と輸送を遂行し、
着実に実績を挙げていた。
元々の実力の高さもあり、
また、彗星のように現れた
期待の新人として
当時のヴェリカにおいて、
一目置かれる存在ともなったし、
カイアトールにおいても
半ば英雄のような触れ込みで
バタハルを紹介したものだった。)
集会所管理人バイロン
(バタハルは主に
正式登録ではない 闇輸送によって
依頼を遂行していたが、
獲得した名声にて
より高次の取引も得られるだろうと、
このヴェリカ集会所へ
訪れる事になるのだった。)
集会所管理人バイロン
(そこで依頼を受注、
遂行していたある日の事…)
集会所管理人バイロン
(いつも通りに依頼を吟味し
任務へ向かおうとしていた時、
バタハルは、
勢いよく子供にぶつかってしまう)
集会所管理人バイロン
(そして信じられない事に、
子供を打ち据え、
怒鳴りつけたのだ…)
白銀印章交換担当官セブリル
(サイテー!!なんだそいつ!)
集会所管理人バイロン
(ロミナは子供に駆け寄った。
どうやら骨折しているようだが、
命に別状はなく安心したものの、
年端もいかぬ子供にぶつかり、
邪魔だと怒鳴りつけて殴りつけ
尚も危害を加えようとする
このアーマンに対し、
ロミナは激怒した。)
集会所管理人バイロン
(いくら富と名声を得たところで、
子供を慈しむ事なく、また
他者の痛みを知れない者に
幸福が宿るとお思いですか?
アーマン族を背負っての所業、
それを恥だと思わないのですか?
即刻、
この子に謝りなさい!と
このバタハルを叱りつけた。)
集会所管理人バイロン
(傲慢なアーマンの代表のような
このバタハルは、
鬼の形相となり、
ロミナとバタハルは
間近で睨み合う事十数秒…)
集会所管理人バイロン
(ところで、
なぜ集会所に子供が?と
思うかもしれない。
その集会所には、
ロミナを慕い、
いつしか子供たちが集う
集会所にもなっていたのだ。
騒がしくもあったが、
見ていて朗らかな気持ちになる。
そういう事もあり、
特に提言する事もなくあった。)
集会所管理人バイロン
(そこには、
ロミナの子供も居た。
家族二人の母子家庭。
子供の面倒を見ながら
勤務をこなすというのは、
当時のヴェリカには
なかなか難しいものがあった。)
集会所管理人バイロン
(が、
激務というものでもなく
人が多く集まる集会所の特性上、
一人二人と身内が居たところで
そう変わらぬという判断で
ヴェリカから直々に許可されていた。
ヴァルキオン連合報酬担当官として
ヴェリカ集会所で勤務する際に、
ロミナはヴェリカへ
直接子供の事を交渉したらしい。)
集会所管理人バイロン
(アルレマンシアや
カイアトールでは
こうはいかんだろうな。
だが、この計らいが
この問題の要因の
ひとつとなってしまうのは、
何ともいえぬ気にはなる…)
集会所管理人バイロン
(実は、ぶつかったその拍子に
依頼物である結晶体を落とし、
割ってしまったのだ…)
集会所管理人バイロン
(子供から
ぶつかったわけでもないが
取り返しのつかぬ事に他ならず、
冗談では済まされない事だった。)
集会所管理人バイロン
(バタハルは、
その責任をロミナにあると向けた。
しかし、
ロミナはまず
子供に謝る事が先でしょう、と訴え。
それが果たされたのであれば
損失があるのなら賠償も致しますし
ヴェリカより処罰があるのならば
私はいかようにも受けましょう、と。)
集会所管理人バイロン
(二人は睨み合ったまま
数分は居たな………)
集会所管理人バイロン
(と、さて…
ここらで飲み物でもどうだ?)
白銀印章交換担当官セブリル
(お、キタコレ!!さんせーい)
黄金印章交換担当官アイシス
(いっただっきまーす♪)
青銅印章交換担当官ショリン
(……はい、いただきます。)
集会所管理人バイロン
(さて、
ワシもいただこうかの)
白金印章交換担当官ミーシャ
「あ、
そろそろティータイムかしら」
黄金印章交換担当官アイシス
「そうみたいねー♪」
白金印章交換担当官ミーシャ
「所長が直接動くって、
どこまでもくだけてるわね、ほんと…」
黄金印章交換担当官アイシス
「アットホームな職場です♪」
白銀印章交換担当官セブリル
(何そのブラック企業っぽいの)
集会所事務員サラミア
(そこは喋ってもいい)
白銀印章交換担当官セブリル
(あ、ごっちゃになってた)
黄金印章交換担当官アイシス
「これが
ヴェリカ集会所です♪」
白金印章交換担当官ミーシャ
「ま、悪くないわね…………」
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⇒アスミンとアットホームなのです~
ぽちっとしてくれたおかげで
3位にうあー
みなさんありがとなのです!