?勝気な女の子
「あ、おじさん!
あそんであげる!!」
?おじさんA
「ごめんなあ
おじさんね、
これから忙しいんだ」
?勝気な女の子
「あっそ」
?勝気な女の子
「こんにちは!
ひまだから
あそんであげてもいいわ!」
?おじさんB
「忙しくてね。すまんね」
?勝気な女の子
「あっそ」
?勝気な女の子
「あっ!
ね!どうせひまでしょ?
あそんでやってもいいわよ!」
?お兄さんA
「これから彼女とデートなんだ」
?勝気な女の子
「なによ!
このわたしが
あそんであげるっていってるのに!
ちょっとは
うれしそうなかおしなさいよ!」
?お兄さんA
「ハハハ、
遊んで貰いたいのにごめんね。
それじゃあね」
?勝気な女の子
「べ、べつにあそんでほしいなんて
これっぽっちもおもってないし!」
?お兄さんA
「そっか。それならよかった」
?勝気な女の子
(………おもってないし)
?おじさんA
「ああ言っているが
近い年代の子が居なくて
本当は寂しいんじゃなかろうか。」
?おじさんC
「そういえば一人、
あのぐらいの年の子が
この施設に来るという話があったが」
?勝気な女の子
(!!)
?おじさんA
「貰い手がついたようだよ」
?おじさんC
「そうか、それはよかった」
?勝気な女の子
(………………)
?勝気な女の子
(……べ、べつにがっかりとか
さみしいとかなんて
ぜーんぜん
ちっともおもってないし……)
?勝気な女の子
(………………)
?勝気な女の子
「………おもってないし」
?お姉さんA
「これから仕事なの。ごめんね」
?勝気な女の子
「あっそ!!
それならしかたないわね!」
?勝気な女の子
(……ふーんだ)
?勝気な女の子
「ちょっといってくるわ!」
?おじさんA
「行ってらっしゃい。
お馬さんに気をつけるんだよ」
?勝気な女の子
「このわたしが
おうまさんなんかに
まけるわけないじゃない!」
?おじさんB
「ハハハ……」
?勝気な女の子
(つまんなーい)
?話の長いおじさん
「……ホ、ホ、ホ。
最近よく
このあたりで見かけるのう…」
?勝気な女の子
(あ、はなしがながいおじさんだ……
なんか
めんどくさいのよねー……)
?勝気な女の子
「だって
みーんないそがしいって
あそべないんだもーん」
?話の長いおじさん
「ふむ………」
?話の長いおじさん
「そうじゃな………
まず、嬢ちゃんは
勤労の喜びというものを」
=====30分経過=====
?話の長いおじさん
「…………という事じゃ。
どんな綺麗事を言っても
物欲は生きる原動力である。
欲があるからこそ」
?勝気な女の子
「……あーわかったわ!
でもね!
わたしまだこどもだし!
おしごとなんてできないもん!」
?話の長いおじさん
「ホ、ホ、ホ………」
?話の長いおじさん
「………つまり、
勤労というものは
何も金銭的対価や
業務における契約、
物資等の交渉なくとも
成立する、という事なのじゃよ
いうなれば、
仕事でなくても良い。」
?勝気な女の子
「……どういうことよ?」
?勝気な女の子
「うわぁ……
こんなとこあったんだ……」
?話の長いおじさん
「嬢ちゃんの住まいからは
路地にちょうど警備兵が居って
子供の通行を禁じておるからの」
?話の長いおじさん
「…失礼するぞい」
?優しい声
「こんにちは。
先日も一人、
道に迷われた旅人を
説かれたようですね。
先ほど、
ヴェリカ集会所へ
貴方に感謝の意を示す方が
訪れていましたよ。」
?勝気な女の子
(うわぁ……かっこいー……)
?話の長いおじさん
「ホ、ホ、ホ……
それがワシがこのヴェリカに
居を定めるに至る宿業だからの…」
?春風のような声
「昨日は本当に
ありがとうございました。
あの銘菓ごま蜜団子と
銘菓ひよこまんじゅう……
子供たちも
おいしいおいしいと
本当に喜んでおりましたわ。」
?勝気な女の子
(……きれいでやさしそう………)
?話の長いおじさん
「これぞ贈った甲斐もあろうもの。
これほど
喜ばしい事はないものじゃ…」
?春風のような声
「ふふっ」
?春風のような声
「……あら、そちらは…
もしかして
新しい子……かしら?」
?話の長いおじさん
「いつも一人で
寂しそうにしておったからの」
?勝気な女の子
「べ、べつに
さみしかったわけじゃないし!」
?春風のような声
「あら……元気な子なのね。
昨日の残りだけど…
よかったら、はい、これとこれ。
あ、こっちの丸いのは、
ちゃんと奥歯で噛んで食べてね?」
?勝気な女の子
「……あ、ありがと!」
?春風のような声
「あら、いい子ねー
ちゃーんとお礼言える子なのね?」
?勝気な女の子
「べ、べつに!
おれいぐらいちゃんといえるし!!」
?春風のような声
「ふふっ
お名前は……?…………」
?勝気な女の子
「やっほー!
きょうもきてあげたわよ!! 」
?春風のような声
「あら、今日も元気ね!」
?元気な女の子
「あー!おはよー!!」
?勝気な女の子
「おはよ!
わたしいなくて
さみしくなかった!? 」
?元気な女の子
「さみしかったー!」
?勝気な女の子
「なんでそんなさみしがりやなのー!
まだまだ
おこちゃまねーまったく!」
?勝気な女の子
「いいわ!
わたしがきょうも
いっしょにいてあげるー!
このわたしに
かんしゃすることね!!」
?元気な女の子
「やったー!」
?春風のような声
「ほんっと、
元気でかわいいわねー」
?元気な女の子
「あてくしもげんきなの!
かわいいのー!!」
?春風のような声
「うん、そうねー
元気いっぱいね?ふふ」
?優しい声
「…ちょっといいかな?」
?優しい声
「あれは
昨日任務を受けた団体さんだ。
あの様子だと、
一気に報酬担当官に行くと思う。
気をつけて。」
?春風のような声
「任せて。
……それじゃ二人とも。
ここの中で、遊んでてくれる?」
?元気な女の子
「うんー!」
?勝気な女の子
「ま、
入ってあげてもいいわ!」
?春風のような声
「……ありがとう。
貴方には昔から助けられてばかりね…
この仕事も貴方がきっかけだし…」
?優しい声
「…なぁに、
それもこれも
僕の仕事のうちだからね。」
?春風のような声
「さすがね。
頼もしいわ。」
?本もってるおじさん
「報酬担当官殿、失礼するよ。
報酬を頼みたい。
この者らの報酬もお願いする。」
?春風のような声
「あらいらっしゃい~
昨日は大変でしたねー」
?本もってるおじさん
「なぁに、我ら
ヴァルキュリアギルドにかかれば
この程度の任務は造作もない事。」
?春風のような声
「うふふっ。
実に頼もしいですわ。
それでは、達成状況を……」
?勝気な女の子
「ねぇ!
きょうはトランプと
ぽぽりごっこよ!!」
?元気な女の子
「えっ………
……うん、いいよ」
?けもの
「ぽっぽー」
?勝気な女の子
「あ、ぽっぽがきた!!」
?けもの
「ぽっぽー!」
?勝気な女の子
「あんたもう
ケガだいじょうぶなの!?」
?けもの
「ロミナさん
まいにちきてくれたから
ばっちりなおったっぽー!
それに
ポポリはすぐなおるんだっぽー!
ポポリはすごいんだぞーっ!
えっへん!!」
?勝気な女の子
「ポポリもなかなかやるじゃない!」
?春風のような声
「ちゃーんと、
おとなしくしてたから
すぐに治ったのよ?
イアフもよく頑張ったわ。」
イアフ
「ぽっぽー!
ロミナさんも
ありがとだっぽー!
とってもやさしくて
あったかくてやわらかくて
だいすきだっぽー!!」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「もうイアフったら……
…でーも、
すぐ治るからって、
ケガしちゃダメなんだからね?」
イアフ
「わかってるっぽー!」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「うふふ」
?勝気な女の子
「ね、さっきのつづきしよ!」
?元気な女の子
「………うん」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「明日はヴェリカ創設記念日よ。
みんなの力で、
楽しくて
綺麗な集会所にしましょうね?」
?勝気な女の子
「このわたしにまかせておきなさい!」
?元気な女の子
「あてくしもがんばるー!」
イアフ
「ぽっぽー!」
?その他の子供たち
「おー!」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「大体終わったし、
そろそろ時間ね…
ご家族に心配させても何だし…」
?樽
「うむ、ならば
ワシが送り届けようか」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「助かるわ。
それじゃお願いします」
?樽
「最後の戸締りを頼む」
?優しい声
「了解です」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「了解です」
?勝気な女の子
「わたしは
さいごまでてつだうわ!!」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「あら、ありがとう。
それじゃ、その紙を………」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「うーん、
ボトル糊がなくなっちゃったわ……」
?優しい声
「アラビックヤマトならあったかな…」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「でんぷん糊じゃないと……
子供が
間違って舐めたりしたら体に悪いし」
?勝気な女の子
「このわたしが
まちがってなめるだなんて
そんなのあるわけないじゃない!」
?優しい声
「…ほら、大丈夫だよ。
ああ見えてしっかりしてる。
そこまで子供じゃないさ」
ヴァルキオン連合報酬担当官ロミナ
「……それもそうね。
それじゃ、それにしましょうか」
?優しい声
「わかった。倉庫見てくる。」
?勝気な女の子
「ついていってあげる!」
?優しい声
「はは、ありがとう」
?優しい声
「……ないなあ」
?勝気な女の子
「もう!しっかりしてよね!
はやくおわらせて
トランプであそぶのー!!」
?優しい声
「ははは、そうだね。
………何にしても
糊ないと飾りつけ終わらないし
もう少し探してみよう」
?元気な女の子
「おにーちゃん!
おきゃくさんだよー」
?優しい声
「あー……
営業時間終わってるのになあ…」
?勝気な女の子
「ロミナがいるんだから
まかせとけばいいの!!」
?優しい声
「ま、そうしよっか」
?優しい声
「お客さんはロミナに任せるよー」
?元気な女の子
「うん、わ…かっ………ー…」
プシュウウゥゥゥゥゥゥーーッ
…試………
………波………ず
投与……値………
……脳…規……リア。
?研究員A
「測定値クリア。」
?研究員A
「精神状態良好。
異常なし。」
?研究員B
「研究班長。
被験対象の復帰を確認しました。
最終確認お願いします」
?研究班長A
「………………」
?被験体
「………………」
?研究班長A
「………………」
?被験体
「………………」
?研究班長A
「……比較精神被験体。
聞こえているか?被験体。」
?被験体
「………………」
?研究班長A
「被験体ID:Hiyoko_EL-[GD9802]
聞こえているならば反応せよ。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
?研究班長A
「………………」
?研究班長A
「………反応なし、か。
もうこの被験体はダメか……」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「…………ひよこ…」
?研究班長A
「…………確認した。」
?研究員A
「了解、復帰確認完了認可。
これより監視プロセスへ移行。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………ひよこはどこ?」
?研究班長A
「ひよこまんじゅうは明日届く。
ごま蜜団子の方は
衛生上断らせてもらうが。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………そう…」
?研究班長A
「Hiyoko_EL-[GD9802]が
ここの管轄として
搬送されてきた時は、
一切の反応を示さなかった。
精神療養施設では
お手上げだったのだろう。
しかし、
ひよこまんじゅうを見た途端に
反応を示したんだ。」
?研究班長A
「それは覚えているか?」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………覚えてる」
?研究班長A
「はは、よろしい。
……さて、
今日も強化プログラムに入るぞ。
被験体ID:Hiyoko_EL-[GD9802]
君ならいずれ
あらゆる端末操作に熟達するだろう。
素晴らしい素質だよ。
君のような逸材は近年類を見ない。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
?研究班長A
「Hiyoko_EL-[GD9802]。
君には期待している。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………うん」
?研究班長A
「……なるほど。
素晴らしい能力だ。
達成目標は山積みだが、
君なら乗り越えられると
期待しているよ。
Hiyoko_EL-[GD9802]。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………うん」
?研究班長A
「……しかし、
ただ課題を課すだけでは
Hiyoko_EL-[GD9802]も
つらかろうと思ってな……
何か欲しいものはあるか?
…ごま蜜団子は無理だが。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「……………名前……」
?研究班長A
「………名前?
名前なら既にあるだろう。
Hiyoko_EL-[GD9802]。
これが君の名称だ。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「…………違う。
……名前………欲しい。」
?研究班長A
「ふむ………
考えておこう。
だが期待するな」
?研究班長B
「あら……
被験体如きが
おこがましくも
名前を欲しがるなんて
これはとんだ笑い話だわ」
?研究班長A
「……君は有能だが、
少々、口が過ぎるのがたまに傷だな
洗脳ばかりしていると
そこまで精神が堕落するのかね…?」
?研究班長A
「…洗脳研究班長レンシアよ。」
洗脳研究班長レンシア
「……では質問に質問で返しますがー
…モノ風情に感傷する暇が
ある方がどうかと思われますが?」
洗脳研究班長レンシア
「…比較精神研究班長ネビン殿?」
比較精神研究班長ネビン
「………………」
洗脳研究班長レンシア
「ククッ………
でもほんーっと……」
洗脳研究班長レンシア
「ヤバいわよーこの子……
療養施設から、
なんの反応も示さないコイツが
急に送り付けられて来て
最初くっだらない粗大生ゴミ
送りつけてきてーだなんて
思っちゃってたけどさ!
実はこの人形の
脳の自衛抵抗がぶっ壊れちゃってて
もしかしたらあらゆる強化法の
その特性を吸収できる可能性が
非常に高い逸材だー、って!
こーんな面白いオモチャ
遊ばない手はないわよネー!!」
洗脳研究班長レンシア
「………ゾックゾクしちゃう…」
比較精神研究班長ネビン
「……………下品なやつめ」
比較精神研究班長ネビン
「素晴らしい伸びだな……
しかもこのキャパシティは……」
?研究員A
「従来の被験体のうち
最高値を弾き出したあの
"Jessica07_HM-[T8370]"や、
それを下回るものの
準拠する値の
"Quess_HE-[NZ333]"
ならびに特異型ですが
"StealthMO_HM-[TYK726]"の
およそ4倍です!!」
?研究員A
「しかもこれは
Hiyoko_EL-[GD9802]の
現在値での比較……
そしてこの安定度と潜在値。
その力は計り知れません……」
?研究員B
「"Jessica07_HM-[T8370]"は
精神面も人格面も能力面も
比較的安定していました。
ですが、
それは感性に特化されたもので
理論だてた能力の行使において
"Jessica07_HM-[T8370]"は
無能力という側面もあり…」
?研究員B
「しかし、
Hiyoko_EL-[GD9802]は
その論理性が素晴らしい。
これは、
あらゆる端末操作や
言語解析と超入力等……
いわゆる
『なんとなくわかる』ではなく
確固たる理論として
あらゆるものを理解する。
そんな能力ともいえます。」
?研究員B
「更に際立つのが
人格面での安定。
"Hiyoko_EL-[GD9802]"は
自我が失われているはずなのに…」
比較精神研究班長ネビン
「自我のない人間、か……」
?研究員B
「そうですね……」
?研究員A
「通常、自我を持たない者は
その人格の根幹を失う為に
自我崩壊しその生命活動を損失、
生物としての
生存すら難いはずですが……」
?研究員B
「仮に自我があるとすれば
この強化法の吸収率や
一面性の性質そのものが
説明つきません……
元々の才能によるものなのか…」
?研究員A
「いやしかし才能面の方は
取るに足らぬものでした。
能力のキャパシティが
この強化法に伴って
脈絡なく急激に増幅している…
今までの被験体の例には
およそ該当しませんね…」
比較精神研究班長ネビン
「………………」
比較精神研究班長ネビン
「引き続き監視を続けてくれ」
比較精神研究班長ネビン
「Hiyoko_EL-[GD9802]。
調子はどうだ?」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「…………うん…」
比較精神研究班長ネビン
「……それなら良い」
比較精神研究班長ネビン
「……Hiyoko_EL-[GD9802]。
今日はこんなものを持ってきた。」
比較精神研究班長ネビン
「トランプというものだ。」
比較精神研究班長ネビン
「……遊んでみないか?」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「……トランプ…………」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………うん…」
比較精神研究班長ネビン
「ひよこまんじゅう………
……好きなんだな?
うまそうに食っている」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………うん……」
比較精神研究班長ネビン
「……そうか」
比較精神研究班長ネビン
「……好きだったんだろうな。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
比較精神研究班長ネビン
「…………昔も。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「…………わからない…」
比較精神研究班長ネビン
「……何かあったか?」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………わからない…」
比較精神研究班長ネビン
「ふむ……
元気が無いように見えたのでな
体調が優れないというなら
遠慮なく言ってくれ。」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
比較精神研究班長ネビン
「………………」
比較精神研究班長ネビン
「………では、また」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「……そと…………」
比較精神研究班長ネビン
「…………!!」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「……いきたい………」
比較精神研究班長ネビン
「……外に、行きたいのか?」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………わからない……」
比較精神研究班長ネビン
「素晴らしい………」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「………………」
比較精神研究班長ネビン
「……よくやったな。
Hiyoko_EL-[GD9802]。
君はようやく
当初の期待値を超過した
これからもまだまだ
君の能力を………」
比較精神研究班長ネビン
「人類の能力の限界を
ここに導き出す為に
これからも引き続き
頑張ってもらわねばならんが……」
比較精神研究班長ネビン
「ひとまずはおめでとう。
君は実に素晴らしい……」
Hiyoko_EL-[GD9802]
「…………うん……」
比較精神研究班長ネビン
「…うむ、この結果ならば
生体名を許可してもいいだろう」
比較精神研究班長ネビン
「よく頑張ったな。
君は明日から」
比較精神研究班長ネビン
「"サラミア・エリーン"と名乗るが良い。
正式に戸籍も取得してある。
もしこの研究所を出る時が来るなら
どこで名乗ろうと問題はないぞ」
サラミア・エリーン
「……サラミア…………」
サラミア・エリーン
「私、サラミア………」
比較精神研究班長ネビン
「そうだ。
ようこそサラミア。」
サラミア・エリーン
「………………
…………ありが、とう……」
比較精神研究班長ネビン
「………この数値は…!?」
比較精神研究班長ネビン
「……………確かか?」
?研究員A
「間違いありません。
試行回数は確証に至る
最大数を実行しました。」
比較精神研究班長ネビン
「………………」
?研究員B
「………さすがに…」
洗脳研究班長レンシア
「やっぱりねー!
思ったとーりだわぁ!!」
比較精神研究班長ネビン
「20倍…………だと」
比較精神研究班長ネビン
「突然だが、
君はここから
外に出る事になった。」
サラミア・エリーン
「…………そと…?」
比較精神研究班長ネビン
「ああ、そうだ。
この研究所で
君に出来る事はもうない。
それに、君は前から
外に出たいと言っていたろう?」
サラミア・エリーン
「…………うん……」
サラミア・エリーン
「でも……………」
サラミア・エリーン
「…………なんで?」
比較精神研究班長ネビン
「………………」
比較精神研究班長ネビン
「理由は君に知る権利はないし
こちらが開示する義務もない」
比較精神研究班長ネビン
「大丈夫。
何も怖い事はない。
ただ、
外に出る時に
眠らないといけないんだ……
眠って、目覚める……」
比較精神研究班長ネビン
「……そう、
今はただ眠るだけだよ」
サラミア・エリーン
「………………?」
比較精神研究班長ネビン
「……………許せ…」
洗脳研究班長レンシア
「アハハハ!
何それー!
所詮人形相手に
一体なんの配慮ですかー!?」
サラミア・エリーン
「…………人形…?」
比較精神研究班長ネビン
「レンシア!
黙らないか!!」
サラミア・エリーン
「ネビン……
私、人形………?」
比較精神研究班長ネビン
「……………サラミア…」
?研究員B
「………ネビン班長!
異常な数値がみられます…!」
サラミア・エリーン
(人形………)
比較精神研究班長ネビン
「レンシア!
この子がどんな目にあって
ここに来たのか!!
それを思って
貴様は何も思わんのか!!」
比較精神研究班長ネビン
「……最後くらい…………
…最後くらいは
人間として在らせてやろうと
思わんのかこの下衆が!!」
洗脳研究班長レンシア
「うっさいわねーーー………」
洗脳研究班長レンシア
「………あのなー!!
おめーらは人形なんだよ!
都合よく作って
都合よく捨てるだけの
単なるお人形さーん♪」
洗脳研究班長レンシア
「……人形は人形らしく
黙っておとなしく
解体されてろってーの!!」
…私は……………
……………人形……?
…私は………
……私は…………………
私は人形じゃない!!!
……ここじゃない……………
………違う……
………違う…………
サラミア・エリーン
「ここは……………?」
はああああううぅぅっ!?
サラミア・エリーン
「ヴェリ……カ………?」
サラミア・エリーン
「………ヴェリカ……」
ズシャァッ
…ミー…シャ……?
?精悍なアーマン
「あ、気がついたんだね!
よかっ
たどおおぅえぇっ!?!?」
ドンガラガッシャーン
サラミア・エリーン
「………………」
?精悍なアーマン
「あいたたたたー」
サラミア・エリーン
「…………大丈夫?」
?精悍なアーマン
「だーいじょうぶ!
だいじょうぶ!!
いやー、
おっちょこちょいでさー
患者に心配されてちゃ
世話ないねーまったく!ハハッ」
サラミア・エリーン
「患者………?
あ、そっか私………」
?精悍なアーマン
「いやー、
ヴェリカ北部近郊で
アンタを発見した時にゃー、
もーくたばってっかと思ったよー
まじ心配したんだぞー?」
衛生兵スケイラ
「あ、アタイは
衛生兵スケイラ!
輸送任務の随伴兵として
くっついてたんだけどねー
まー、傷の治療ぐらいしか
取りえないもんで……」
衛生兵スケイラ
「他にやらされる事もないアタイは、
こーして看病にまわされてる、ってワケ
こんなカンジでわかるかなー?」
サラミア・エリーン
「………うん」
衛生兵スケイラ
「んじゃあ、そんなカンジで
完治するまでヨロシッ
ックッってええんんぬえええああああんらあぁー!?!?」
ズッテンコロリーン
サラミア・エリーン
「………………」
衛生兵スケイラ
「………ねえねえ!
なーんであんなトコで
ぶっ倒れてたん?
今の時代、
行き倒れなんて珍しいよー?」
サラミア・エリーン
「…………わかんない…」
衛生兵スケイラ
「そっかー
ま、ゆっくりしてきなよ。
全額ヴェリカ負担だからさー」
サラミア・エリーン
「………ありがとう…」
衛生兵スケイラ
「…え?
ヴェリカで働きたい?
まー完治そろそろだけどー
そうだなー……
職探しなら、
まず適性試験を受けてもらわないと
どうにもならないよー」
衛生兵スケイラ
「それで、アタイみたいに
頭悪くて能力も低いってカンジだけど、
体力だけは自慢っていうガテン系は、
頭使わなくていいけど
ひたすら付きっ切りで
機材運搬などの肉体労働もある
看護にまわされる事は
結構あるっぽいけど、
それも能力と運次第だからねー」
衛生兵スケイラ
「サラミアは、
何か得意な事ってあるんかい?」
サラミア・エリーン
「得意なこと………」
サラミア・エリーン
「わからない………」
衛生兵スケイラ
「ま、それも試験で
あらゆる能力が
数値化されるみたいだから、
能力が高ければ高いほど、
就ける職の選択は増えるってカンジ」
衛生兵スケイラ
「まー、アタイみたいな
なーんも取りえないのは」
サラミア・エリーン
「……そんな事ない」
サラミア・エリーン
「…スケイラが居ると
なんだか楽しいもの……」
衛生兵スケイラ
「え………」
衛生兵スケイラ
「あははー………
そんな事言われたの初めてだー! 」
衛生兵スケイラ
「サラミア!ありがとー!!
ちょっと自信ついた!!」
むぎゅうー
むぎゅー
サラミア・エリーン
「……い………痛い………」
衛生兵スケイラ
「……サラミアさ。
……あのー………
なんつーか、
…サラミアの事で
誰か話してたからさー……
こっそり聞いてたらなんか………」
衛生兵スケイラ
「実はサラミアって
特級庇護対象みたいなんだよ。」
衛生兵スケイラ
「……一体何があったんだ?」
サラミア・エリーン
「………………」
衛生兵スケイラ
「あー………ごめんなー…
アタイってほんっと無神経…」
衛生兵スケイラ
「……でもさ、
よっぽどの事がない限り
特級庇護対象になんてならないしさー
こうやって知り合ったわけだし
心配になっちゃうんだよ……
…それと、
特級庇護対象に認定されると
中の上流ぐらいの給与に
匹敵する金額が毎月支給され、
住居も生活必需品も無償で付与!
贅沢しなけりゃ遊んで暮らせるんだ!」
衛生兵スケイラ
「ま、何があったか知らないけど
アタイは別にサラミアが
どこの誰で何してきたヤツだろうと
そんなん関係ないからさ!
ゆっくり休んでってなー!」
サラミア・エリーン
「………ありがとう…」
衛生兵スケイラ
「サラミアー!!
アンタこの適正結果すごいぞー!?
肉体労働以外どこでもいける!!
特に端末操作分野と
仮想言語分野!!!
他にもなんかよくわかんないけど
凄そうなのも超評価!すっげー……
こんなん見た事ないぞー!?」
サラミア・エリーン
「………………」
衛生兵スケイラ
「でもさー……
働かなくてもいいのに
わざわざ働くのかー?
趣味に生きられるんだぜー?
小銭稼ぎなら
いつだって出来る都市なんだし
何も定職に就かなくても……」
サラミア・エリーン
「………でも働きたい…」
衛生兵スケイラ
「……そっかー
で、サラミアは一体
どこで働きたいの?」
サラミア・エリーン
「………………」
サラミア・エリーン
「………ここ……」
衛生兵スケイラ
「えーどこどこー!?」
ここにしたい…………
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⇒静止した闇の中で
ぽちっとしてくれたおかげで
1位にうあー
みなさんありがとなのです!