?冷酷な声
「キャスタニックは汚物だ
かような混沌の化身を
この聖都に招き入れる事自体
災厄の根源となりうるのでは?」
?冷酷な声
「秩序なき世界に平穏など訪れん。
歴史がすべてを物語っている。
秩序失い
混沌が世界を支配した時
闇の化身や大魔王が蘇り
人々は混沌と恐怖に支配される。
そこに平穏など微塵もなかろう。」
?高貴なる声
「ええ。秩序こそすべてよ
それを乱す
無用なゴミは排除すべきです。」
?高貴なる声
「しかも事もあろうに
この聖都に多大なるご寵愛を下さる
エルン様にまで!!
嗚呼なんという狼藉かしら…
かような
荒唐無稽で稚拙滑稽極まりない
狼狽を喚き散らすだなんて…
まったく
ハイエルフの恥ですわ!!」
?老練な声
「騒々しいな」
?高貴なる声
?冷酷な声
「大長老様!!」
?高貴なる声
「大長老様………
ご子息様の心中、お察し致します…」
?冷酷な声
「すべては
あの悪魔の親子が悪いのだ!!
混沌の権化こそ
完全なる秩序が裁かねばならぬ!!」
?冷酷な声
「大長老様もそうお考えでしょう!?」
?老練な声
「うむ。そうじゃな
このアルボレアに混沌は無用。
秩序の弊害となる存在は
我らが聖槌に臥されるべきじゃ。」
?老練な声
「かようなモノが
未だにこの大地に根を張り
同じマナを共有している事自体
実に由々しき事態じゃ……
その蛮行……
闇の化身ならびに
大魔王の所業に他ならぬ。」
?高貴なる声
「キャスタニックは
大魔王の手先に違いないわ!」
?冷酷な声
「まったくだ!!」
?老練な声
「……そう急くでない。
事を急いては
ろくな事にならぬぞ」
?高貴なる声
?冷酷な声
「ハ、ハッ!失礼しました……」
?老練な声
「………時に、
研究所長の息子は
ディバインエルフの責務
などという大義名分掲げ、
世界の放蕩三昧に明け暮れておると
そう聞き及んでおるが………」
?老練な声
「………未だ
見過ごされておるのかね?」
?高貴なる声
「……お言葉ですが大長老。
ディバインエルフは
古代エルフからの遺産………
その能力は、
このアルレマンシアより
手放すにはいささか……」
?老練な声
「………じゃが、
ここに
定住しておるわけでは
ないのだろう……?」
?高貴なる声
「………ご指摘の通りに。」
?高貴なる声
「……しかしながら大長老様!
その放蕩も
見聞の旅との名目にたがわず
確かな恩寵をこの聖都へと還し」
?老練な声
「今回の追放において
小事を大事にしたのは
どこの誰かのう………?」
?高貴なる声
「………………」
?冷酷な声
「魔導工学研究所長
スカリオン・ホワイトリバーです」
?老練な声
「……曲がりなりにも
ワシの娘は追放され、
じゃがしかし
彼の息子は未だにのうのうと
このアルボレアを放蕩しておる。」
?老練な声
「……一糸の乱れも許されぬ
完全なる秩序でなければならぬ、
この聖都に居を置きながらも、だ…
しかもこのワシに対して
大層な物言いを吐きおったわ!」
?高貴なる声
「……………ですが……!」
?老練な声
「魔導工学研究所長スカリオンを
ただちに此処へと呼んで参れ。」
?高貴なる声
「………………」
?老練な声
「………聞こえなかったのか?」
?高貴なる声
「………………」
?老練な声
「長老ニミュエ・ローヘン。
………二度は言わんぞ。」
長老ニミュエ・ローヘン
「…………仰せのままに。」
?老練な声
「聞こえたようじゃな」
?老練な声
「それと…………」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………?」
ゴッ
ゴゴンッガッ
?冷酷な声
「……………!!」
ジジッジッッッ
?老練な声
「遠くでコソコソと
聞き耳立てておる
出来損ないの
放蕩ディバインエルフも、な」
長老ニミュエ・ローヘン
「………………!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「エル……!……ッ…!」
ジジジッジジガガガガガガ
ブツッ
?優しい声
「………………」
?優しい声
「そろそろ追放、かな……」
?老練な声
「今日は
一人のディバインエルフが
このアルレマンシアへと
御降臨される記念すべき日だ。
皆の者。
そそうのないようにな。」
一同
「ハッ!」
?威厳ある声
「さあ、ご挨拶なさい」
?おとなしいエルフの子供
「あ、あの………」
?おとなしいエルフの子供
「ぼくは、その、エルフの……」
一同
「………………」
?おとなしいエルフの子供
「………るふの……ぉ……」
一同
「………………」
?おとなしいエルフの子供
「……っ…
……ひぐっ……ぐすっ……」
ざわ……
ざわ…………
タッ
?快活なエルフの子供
「あなた
でぃばいんえりゅふでしょ!!
しっかりしなちゃいー!!」
?おとなしいエルフの子供
「ひぐっ………」
?快活なエルフの子供
「おとこのこでしょ!?」
?おとなしいエルフの子供
「……………うん……
……ごめん……………」
?快活なエルフの子供
「……よちよち」
?高貴なる声
「あら元気な子ね。」
給仕
「ディバインエルフ様!
お食事をお持ちにあがりました!」
?おとなしいエルフの子供
「うん」
給仕
「こちらに置かせて頂きますね!
それでは失礼致します!」
?おとなしいエルフの子供
「うん」
給仕
「あらなんとお美しいお皿!!
ディバインエルフ様の
見目麗しき食しが
目に見えるようです!」
?おとなしいエルフの子供
「うん」
長老会警備兵
「ディバインエルフ様!
今日はご勉学に
勤しんでおられるのですね!」
?おとなしいエルフの子供
「うん」
長老会警備兵
「嗚呼!?
なんとお美しい字でしょう!
さすがはディバインエルフ様!」
?おとなしいエルフの子供
「うん」
市民A
「今日はお散歩なのですね!
さすがはディバインエルフ様!
歩く様も
まるで神の如しですわ!!」
?おとなしいエルフの子供
「………うん」
?おとなしいエルフの子供
(………………)
?快活なエルフの子供
「こんなところにいたのね!」
?おとなしいエルフの子供
「………あ」
?快活なエルフの子供
「だらしないかおして
ばかっぽいわよー!」
?おとなしいエルフの子供
「………………」
?おとなしいエルフの子供
「………ばかじゃないもん」
?快活なエルフの子供
「ほら、そのかお
ここをこうして、
ここはこう、そこはそうやって……」
ぐに ぐに ぐにっ
?おとなしいエルフの子供
「……うっ………ぐっ、
…やめっ……うぐっ……」
?快活なエルフの子供
「ここをこうやればー……」
?おとなしいエルフの子供
「うっ………ううーっ……」
?高貴なる声
「あら、仲良し」
市民A
「ディバインエルフ様!
今日も良い天気ですね!」
?おとなしいエルフの子供
「うん、そうだね」
市民A
「それでは失礼します!」
?快活なエルフの子供
「よっ!
あーっ
またぼけーっとした顔してるー」
?快活なエルフの子供
「こんな顔は、こうしてー…」
ぐに ぐに
?おとなしいエルフの子供
「こういう顔なんだから
しょうがないんだってー!!」
?快活なエルフの女子
「ねえ!
これすっごい綺麗でしょ?」
?おとなしいエルフの男子
「これ……何?
今日は何の伝承の空想絵?」
?快活なエルフの女子
「ちーがーうって!!
あのね、これ
ヴェリカっていう
都市の写真なんだよ?」
?おとなしいエルフの男子
「ヴェリカ?なにそれ」
?快活なエルフの女子
「ほんとなーんも知らないのねー…
あのね、
ヴェリカっていうのはー
ヒューマンが
千年あまりの時の中で
こーんなちっちゃい村から
アルレマンシアぐらいおっきくした
っていうすごい都市なんだからー!」
?おとなしいエルフの男子
「ヒューマンが!?
ヒューマンっていったら
あの秩序も何もない
自由の種族じゃないか…
そんな街危ないって………
そんな種族が力つけたら
何されるかわかったもんじゃ…」
?快活なエルフの女子
「へへーん!
そう思うでしょー?
実はヴェリカって、
女神ヴェリックの庇護を
受けてるんだよー!!
女神ヴェリックのお墨付き!」
?おとなしいエルフの男子
「あの女神ヴェリックが……?
そんな面白い事あるもんなんだ…」
?快活なエルフの女子
「そうだよ!
ヒューマンって実は凄いんだから!
ハイエルフも凄いけどねー!!」
?おとなしいエルフの男子
「はは……
ヒューマン好きなんだね……」
?快活なエルフの女子
「だって、
ハイエルフって何かおかしいもん」
?おとなしいエルフの男子
「おかしくないでしょ」
?快活なエルフの女子
「なんかちがうのー!!」
?おとなしいエルフの男子
「ふーん」
?快活なエルフの女子
「そのぼけーっとした顔
なおしてやるー!!」
?おとなしいエルフの男子
「ちょっとー」
?おとなしいエルフの男子
(何か騒がしいな……)
?商店のおやじ
「おい!
そこのキャスタニック!」
?キャスタニック
「ん、なんだ?」
?商店のおやじ
「おまえそこの商品盗んだろう!」
?キャスタニック
「ハァ!?
オレそんなんしてねーよ!」
?商店のおやじ
「商品がなくなってんのが証拠だ!」
?キャスタニック
「だから
オレじゃねーってんだろうが!
今まで生きてきて
盗みなんざしたことねーよ!!」
?商店のおやじ
「その薄汚い面と
角が何よりの証明だ!!」
?キャスタニック
「意味わかんねーよ!!」
またキャスタニックかよ……
出て行け悪魔!
バレバレな嘘だな
汚いわー…
?おとなしいエルフの男子
「あのー………」
?キャスタニック
「おまえも
オレに難癖つけんのか!?」
?おとなしいエルフの男子
「あ、いえ………その……」
?商店のおやじ
「あ、ディバインエルフ様!
どうかこの悪魔の
みえみえの嘘を暴いてください!」
?キャスタニック
「何言ってんだハゲオヤジ!!」
?おとなしいエルフの男子
「……ちょっと失礼しますね」
?キャスタニック
「………どぅわ!?」
?商店のおやじ
「どうですか!?
盗んだのはこの悪魔でしょう!!」
?キャスタニック
「……黙って聞いてりゃ」
?おとなしいエルフの男子
「違う」
?商店のおやじ
「………………ヘ?」
?キャスタニック
「………………!!」
野次馬
「………………」
?おとなしいエルフの男子
「このキャスタニックの方は
この商店で盗みを行ってません
先ほどの発言のすべては
この方の真実を語られています。
それに盗みなど
今までの一度たりとも
行ってはいないようですよ」
?キャスタニック
「それみたことか!」
?商店のおやじ
「ちょ、ちょっと
ディバインエルフ様ー!!
そんなわけないでしょう!?
この男はキャスタニックで
悪魔の角を持つ
薄汚いゴミカスですよ!?」
?キャスタニック
「………あのよォ…
おまえいい加減に」
?おとなしいエルフの男子
「あ、あ、えっと…………」
?高貴なる声
「失礼します」
?キャスタニック
「なんだテメ」
?キャスタニック
「うおッ…すっげ美人………」
?商店のおやじ
「あ、貴方様は!!」
?高貴なる声
「ディバインエルフ様。
貴方様の御力の手により
この者らの愚鈍なる喧騒に
真実という楔を立てられた事。
誠に奥ゆかしく思いますわ」
?高貴なる声
「どうやらこの方は
盗みを働いておらぬのは明白。
また、紛失した商品というのも
ご主人の勘違いかもしれませんし
心無い者による愚行かもしれません
それを確かめる術は
もはや存在しないでしょう。」
?高貴なる声
「ですから、
ここはお互いに譲歩する形で
その荒げる息と肩を
鎮めては頂けませんか?」
?商店のおやじ
「はい……そうします」
?キャスタニック
「ああ、無実だって
わかってくれりゃそれでいいしな」
?高貴なる声
「恐れ入ります」
?キャスタニック
「ありがとなー!
惚れちまいそうだぜー……」
?高貴なる声
「しかし」
?高貴なる声
「ここで一つはっきりとさせて
おかねばならない事があります。」
?高貴なる声
「ここアルレマンシアでは
秩序こそ正義であり、平穏の礎。
一方、
キャスタニックは混沌の権化、
また悪魔そのものとされています」
?キャスタニック
「………………」
?高貴なる声
「今回のご主人の言い分は
あられもない誤解でしたが、
ここハイエルフの聖都において
キャスタニックが居る事そのものが
不相応であり歪みの元なのです。
ここに滞在する以上、
それは避けられません。なぜなら…」
?高貴なる声
「貴方は混沌そのものであり、
悪魔そのものでもあるからです。」
?キャスタニック
「………………」
?高貴なる声
「…私の話、理解できましたね?」
?キャスタニック
「…わーったよー……」
?キャスタニック
「絶世の美女に言われっと
さすがにクるわー……じゃあな」
?高貴なる声
「ご苦労様でした。
ディバインエルフ様。」
?おとなしいエルフの男子
「うん」
?市民B
「ディバインエルフ様!
ありがとうございました!」
?市民C
「なんと神々しい……」
だって、
ハイエルフって何かおかしいもん
?おとなしいエルフの男子
(………おかしいのかな…)
?優しい声
「今日はどこの都市の写真?」
?春風のような声
「………あっ!?
…びっくりしたー……
いきなり後ろに立たないでよー」
?優しい声
「ごめんごめん」
?春風のような声
「…ここは、
荒凪古港っていう港」
?優しい声
「……綺麗な港だね」
?春風のような声
「綺麗でしょ?」
?優しい声
「うん」
?春風のような声
「ふふっ
海っていうのがあってね……」
?春風のような声
「天気のいい日は、
水着になって海を泳いだり
砂浜でボール遊びしたり
砂でお城作ったり
海の家っていうお店で
ジュース飲んだりパフェ食べたり
浜辺に敷いたシートの上に寝て
日焼けしたりするんだってー」
?優しい声
「そうなんだ」
?優しい声
「……なんかこういう話する時
本当に嬉しそうに話すよね」
?春風のような声
「…えへへー
………行ってみたいなー…」
?優しい声
「行けるよ」
?春風のような声
「えー?だってここは……」
?優しい声
「………………」
?春風のような声
「どしたの?」
?優しい声
「………………」
?優しい声
「ほんと、綺麗だな……」
?春風のような声
「………………」
?優しい声
「………………」
?春風のような声
「あの」
?優しい声
「あ、うん」
?春風のような声
「ディバインエルフって、
人の心が読めるんだよね……?」
?優しい声
「大体合ってるよ」
?春風のような声
「………………そっか!」
?優しい声
「……なになに?」
?春風のような声
「なんでもなーい!
ばいばーい」
?優しい声
「ロミナ!
ちょっと待ってよー!
どうしたの~?」
ロミナ・グレングリーン
「しらなーい」
?優しい声
「なんだっていうんだ……」
?優しい声
「………………」
?優しい声
「………………?」
?優しい声
(誰かいたような……)
?高貴なる声
「ディバインエルフ様。
ご機嫌いかがかしら?」
?優しい声
「うん………」
?高貴なる声
「元気の無いご様子ですが…」
スッ
?高貴なる声
「こんな
至らぬ私などでよろしければ……
お話…聞かせて下さいませんか?」
?優しい声
「………………」
?高貴なる声
「………………」
?高貴なる声
「お話になってくださらないのね…」
?優しい声
「………………」
?高貴なる声
「当ててごらんにいれましょうか?」
?優しい声
「…………えっ」
?高貴なる声
「ふふ…………」
?優しい声
「………………」
?高貴なる声
「あの娘の事でしょう?」
?優しい声
「!」
?高貴なる声
「ディバインエルフ様の事、
何でもお見通しですのよ……」
?優しい声
「………うん」
?高貴なる声
「貴方はディバインエルフ。
あの娘は
そう悪い家の出ではありませんが
取り立て突出した能力も持たぬ平娘。
貴方様には不釣合いですわ……」
?高貴なる声
「あの娘が
貴方以外の男のもとへと嫁ぐのも、
それもまた自然の因果に
過ぎぬ事だったのですよ…」
?高貴なる声
「それに、
貴方様と幼少の頃より
共に過ごしてきたというのに
貴方様には目もくれず
他の男の……」
?高貴なる声
「『大長老様の息子』という肩書きに
うつつを抜かし心奪われる女の…
そんな薄汚い女の精神……
私は理解に苦しみます……
断固として許す事はできませんわ…」
?優しい声
「………………」
?高貴なる声
「…………でもね?」
?優しい声
「…………うん」
スッ
ギュッ
長老ニミュエ・ローヘン
「このニミュエ・ローヘンなら
未来永劫……
この身も心も
ディバインエルフ様の……」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシーク様の
おそばに添う覚悟は………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ニミュエ様…………」
アルレマンシア警備兵E
「今日も事もなしで何よりだ」
アルレマンシア警備兵F
「秩序あってこその平和よ
ディバインエルフ様は
今日も世界の秩序を維持する為に
混沌とした外界を冒険して……」
アルレマンシア警備兵E
「ディバインエルフ様が
おられてこその平和という事だ」
市民D
「でも最後に旅立たれてから
数年経ってるんじゃないかって
もっぱらの話よ………?」
アルレマンシア警備兵E
「実はこっそり
帰られてると聞くぞ?
この閑静な聖都を
騒がせたくないという配慮とな」
アルレマンシア警備兵F
「さすがはディバインエルフ様ね!」
?雑貨店店主
「いらっしゃい!!
今日も麗しいですね!
さ、何をお買い上げに?」
ロミナ・シルバーレイン
「うちの娘がよく転んで
擦り傷が絶えないのよ……
何か簡単に使えて
すぐに効果の出る薬はないかしら?
そんなに強い効果でなくていいわ。」
?雑貨店店主
「あらぁー……
お嬢ちゃんまた転んだの?」
?元気な女の子
「ころんじゃったー」
ロミナ・シルバーレイン
「元気なのはいい事なんだけど…
元気すぎてちょっと、ね~……」
?元気な女の子
「あてくしげんきなのー!」
?雑貨店店主
「あはは。
いつも元気でかわいらしいですね」
ロミナ・シルバーレイン
「うふふ、ありがとう」
?雑貨店店主
「あ、
そのぐらいの効能でよろしければ
こちらのバンテージなど……
ただしじっくり貼り付けていただく
必要がありますが………」
ロミナ・シルバーレイン
「はい、これですぐ治るわよー」
?元気な女の子
「やったー!
いっぱいあそべりゅねー!」
ロミナ・シルバーレイン
「治るけど、
ケガしないように気をつけなさい!」
?元気な女の子
「きをつけりゅー!」
?優しい声
「おやおや、ケガなら
この傷薬はいかがでしょう?
お安くしておきますよ」
ロミナ・シルバーレイン
「あ、すみません……
たった今買ったばかりで」
ロミナ・シルバーレイン
「あ」
ロミナ・シルバーレイン
「エルシーク!?
あなたこの数年どこに……」
エルシーク・ホワイトリバー
「ディバインエルフとしての
責務で忙しくてね。
アルン大陸をまわってきたよ」
?元気な女の子
「おじちゃんだれー?」
エルシーク・ホワイトリバー
「おじっ…」
ロミナ・シルバーレイン
「おじちゃんだって……!
あのエルシークも
もうおじさんかあー……」
エルシーク・ホワイトリバー
「ちょっと冗談きついよ……
数年ぶりに会えたってのに……」
ロミナ・シルバーレイン
「うふふ、ごめんなさい!
…………その、」
ロミナ・シルバーレイン
「なんていうか………」
ロミナ・シルバーレイン
「………嬉しくって」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ふざけるな!
バカな冗談はよしてくれ!」
ダッ
ロミナ・シルバーレイン
「え、なに!?」
ちょっとー……
ロミナ・シルバーレイン
「あ、エルシーク………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ああ、昨日はすまない。
疲れていたのかな。」
ロミナ・シルバーレイン
「疲れてるのに気づかないで
こっちこそごめんなさい……」
?元気な女の子
「ごめんなちゃい!」
エルシーク・ホワイトリバー
「いいんだ。気にしないで。
こっちの問題だから。」
エルシーク・ホワイトリバー
「それより………
もしかして、ロミナの子供?」
ロミナ・シルバーレイン
「そうよ。
ほら、ミーシャ。
お兄ちゃんに挨拶して。」
ミーシャ・シルバーレイン
「おにーちゃんこんにちは!」
エルシーク・ホワイトリバー
「あはは。
ミーシャちゃん、こんにちはー
って、
お兄ちゃんって、僕の事?」
ロミナ・シルバーレイン
「うふふ。
おじちゃんだと
ショックみたいだったしー?
お兄ちゃんって
呼んでもらう事にしました!」
エルシーク・ホワイトリバー
「はは……
ロミナにはかなわないなぁ……」
ロミナ・シルバーレイン
「……でしょ?うふふっ」
エルシーク・ホワイトリバー
「しっかし……
随分と豪勢、だね………」
ロミナ・シルバーレイン
「大長老の家系なら
このぐらいは当然だって。
……ちょっと
未だに慣れないけどね……」
エルシーク・ホワイトリバー
「なるほどね」
ロミナ・シルバーレイン
「ところで、
ディバインエルフ様の
任務とやらを、
お伺いしたいのですがー?」
ミーシャ・シルバーレイン
「でばいねりゅふー!」
エルシーク・ホワイトリバー
「そうだなあ………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ヴェリカ、行ってきたよ」
ロミナ・シルバーレイン
「すごーい!
ここから出られないから
羨ましいわあ………
生であの景観を見たんでしょう!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「凄かったよ。
写真で見た以上に、
絢爛で壮観だった。
でも、写真以上に………」
エルシーク・ホワイトリバー
「活気に溢れて、
街自体が生きてるんだなって
……そう思えた。」
ロミナ・シルバーレイン
「街が………生きてる」
エルシーク・ホワイトリバー
「それから比べると
アルレマンシアは
死んでるんじゃないかな。」
エルシーク・ホワイトリバー
「何もかもが」
ロミナ・シルバーレイン
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ」
ロミナ・シルバーレイン
「なぁに?」
エルシーク・ホワイトリバー
「荒凪古港も行ってきた。
あの時
見せてくれた写真以上に
すごく綺麗で
気持ちの良い場所だったよ」
ロミナ・シルバーレイン
「そうなんだ!
行ってみたいなー………」
エルシーク・ホワイトリバー
「あの時………」
ロミナ・シルバーレイン
「あの時?」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「……エルシーク………」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「僕は………」
エルシーク・ホワイトリバー
「僕は、
ディバインエルフとして
生まれてきて
よかったと思ってるよ。
アルレマンシアに居を構えながら
こうして外界を旅出来る。
それに、」
ロミナ・シルバーレイン
「心も読めるから?」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「実は、そんなに
人の心を覗き見てるわけじゃないよ
本当に必要な時にしか使わない。
この能力は。」
エルシーク・ホワイトリバー
「あと、まだまだ
完全習熟するに至ってない……
未だに、
人の心を読むまでに至るには
体を光らせなければならない。
こっそりと
人の心を読むにあたって
これは致命的ってやつさ」
エルシーク・ホワイトリバー
「僕は、
ディバインエルフなんて祀られ
アルレマンシアじゃ尊敬と羨望の
眼差しで見られる存在だけど、
その実、
ディバインエルフとしても、」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「………………?」
エルシーク・ホワイトリバー
「…ハイエルフとしても、
中途半端なやつだよ」
ロミナ・シルバーレイン
「………………」
ロミナ・シルバーレイン
「そう、なんだ………」
ロミナ・シルバーレイン
「光らないと」
ロミナ・シルバーレイン
「読めないんだ………」
ロミナ・シルバーレイン
「光らないと………」
ロミナ・シルバーレイン
「あ、ごめんなさい!
用事思い出して……
さ、行きましょうミーシャ」
ミーシャ・シルバーレイン
「あ、おにいちゃんまたねー!」
エルシーク・ホワイトリバー
「あ、すまないね。
忙しい中引き止めてしまって」
ロミナ・シルバーレイン
「ううん!
久しぶりにちゃんと話せて
すごく楽しかった……」
ロミナ・シルバーレイン
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ディバインエルフとしても……」
ミーシャ・シルバーレイン
「あてくし、おっきくなったら
おにーちゃんとけっこんするー!」
ロミナ・シルバーレイン
「なにいっちゃってるの!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「ははは。
ありがとうミーシャ。
それじゃ、
ちゃんとおっきくならないとね?」
ミーシャ・シルバーレイン
「あてくし
おっきくなりゅー!」
ロミナ・シルバーレイン
「エルシーク………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ。
これだけは言っておきたい。」
ロミナ・シルバーレイン
「えっ………何?」
エルシーク・ホワイトリバー
「外界はとても危険なところだ。
アルレマンシアに居るうちは
どれだけ恵まれているか
気づきにくいかもしれない。
ダメな部分ばかり
目に付くかもしれない。」
エルシーク・ホワイトリバー
「でもね。
完全なる秩序によって
統制されたこの聖都は
他のどの都市や領よりも
安全で優雅な場所だよ。
おかしな人も居るけど、
外界には冗談じゃ済まない程
おかしな人が居る。
そう、例えば………」
エルシーク・ホワイトリバー
「命のやりとりをしにくる人、とか」
ロミナ・シルバーレイン
「…………そう……」
ロミナ・シルバーレイン
「でもそれってエルシークも
危険だって事でしょ!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「ははは。
命のやりとりの方が、
都合がいいかもね?」
ロミナ・シルバーレイン
「…………へ?」
エルシーク・ホワイトリバー
「僕って、心読み云々よりも
むしろ戦闘型の方らしくて。
過去に存在した
ディバインエルフの中でも
結構珍しいタイプみたいだよ」
エルシーク・ホワイトリバー
「だから大丈夫さ」
ロミナ・シルバーレイン
「そうなんだ。
なんか意外………」
ロミナ・シルバーレイン
「弱そうなのに」
エルシーク・ホワイトリバー
「よく言われる………」
エルシーク・ホワイトリバー
「……それじゃ、またいつか。」
ロミナ・シルバーレイン
「また、ね………
絶対にまた会おうね……」
エルシーク・ホワイトリバー
「もちろん。
ディバインエルフに嘘はないよ」
?老練な声
「ロミナは今までも
素行に問題があった。
およそアルレマンシアに
相応しくない思想の持ち主じゃ」
?老練な声
「息子がどうしてもと言うから
ワシも仕方なく受け入れたが……
やはり、平娘など
取るべきではなかったようじゃ…」
長老ニミュエ・ローヘン
「いいえ、そんな事は………
愛し合う二人の想いを
何よりも尊重した決断として
私は未だに心打たれ」
今は長老会議中につき…
あ、いけません!
ドガンッ
エルシーク・ホワイトリバー
「大長老ォーッ!!
貴方は何という事を……!!
僕は……!!
僕は貴方を許す事はできないッ!!」
エルシーク・ホワイトリバー
「大長老ベリオン・シルバーレイン!!」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「騒々しいな。
ここを
長老会と知っておるはず……」
エルシーク・ホワイトリバー
「その言葉
そっくりそのまま貴方に返そうッ!!
ロミナをなぜ追放した!?
外界はこことは違い
命の危険が常に付きまとうと
知らないとは言わせないぞ!?」
長老ニミュエ・ローヘン
「エルシーク……
あれはロミナに完全な非があった。
追放されて然るべき事をしたの」
エルシーク・ホワイトリバー
「ふざけるなッ!!
おまえらは
この聖都という温室で
ぬくぬくと過ごしてるから
わからないかもしれないが!
外界は不条理な悪の手により
いつ殺されてもわからない
そんな危険な場所なんだぞ!」
?冷酷な声
「さっきから聞いていれば……
この聖都に暮らすだけの
資格がなかった、
ただそれだけの事だ!」
エルシーク・ホワイトリバー
「黙れテルミン・ラフェレイト!
大長老の飼い犬め!!」
長老テルミン・ラフェレイト!
「貴様………!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「……エルシーク。聞いて。
……適正がないと
判断されたという事は
それは秩序を乱す害悪にもなる。
そんな害悪が
外界の害悪にどうされようと
それは成るべくして成る事。
同属同士の醜い争い……
そうして因果は適者に巡り、
追放される事と至った。
ただそれだけの話なのよ。」
エルシーク・ホワイトリバー
「御託は要らんッ!!
いいから教えるんだ!
どこに追放した!?
ここに連れ戻してくるッ!!」
長老ニミュエ・ローヘン
「あなた一体何を言ってるの!?」
長老テルミン・ラフェレイト
「バカかおまえは!?」
スッ
大長老ベリオン・シルバーレイン
「静粛に」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「……エルシークよ。
……なるほど。
追放した事が
そんなに気にいらんか。
……なれば良いか?
エルシークよく聞きなさい。」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「そんなにロミナの事が心配なら
このワシから
読み取ったらどうかね?」
エルシーク・ホワイトリバー
「!!」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「………ディバインエルフの力をもって
かの者に呼びかけん………
光の御心、その身と発せ……」
エルシーク・ホワイトリバー
「ディバインジャック!!」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「……………!?」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄……」
エルシーク・ホワイトリバー
「……なんだとッ!?」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「やれやれだの………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ぐっ……………!?」
エルシーク・ホワイトリバー
「ぐああああああああっ!?」
長老ニミュエ・ローヘン
「大長老!?
どうかそのくらいに……!!」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「案ずるな。ニミュエ」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「若造相手にこのワシが
全力で臨むわけがなかろう……」
エルシーク・ホワイトリバー
「く、くそっ!!
なぜ効かないッ!?
それにその力は……!!」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「気づいておらなんだか。」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「ワシも
ディバインエルフだからじゃよ。」
!!
エルシーク・ホワイトリバー
「クッ………」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「ま、気の済むようにすれば良い。
追放には
この長老らも関わっておらんし、
輸送に関わった者の記憶も
もれなくワシが消し去っておる。
何をしようと無駄じゃがな」
大長老ベリオン・シルバーレイン
「ファッファッファ……」
エルシーク・ホワイトリバー
「クソッ………!
ロミナ……………!!
僕は
なんと無力なんだ……!」
ズシャァッ
長老ニミュエ・ローヘン
「………………」
エルシーク・ホワイトリバー
「ロミナ…………」
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⇒雨、逃げ出した後
ぽちっとしてくれたおかげで
1位にうあー
みなさんありがとなのです!